真っ裸の水遊びに学校公認の火遊び......アメリカ人も羨む「アリエナイ」だらけのドイツ式子育て
Volk Heroes
ドイツの子供たちは遊びを通じて自立心や社 会性を身に付ける KAI PFAFFENBACH-REUTERS
<大人の監視なしにのびのび遊ばせ子供の自立心を育てるドイツ方式にアメリカ人の親たちの常識が吹き飛ばされる>
ドイツ式の子育てを紹介したセーラ・ザスクの新著『アクトン・ベイビー(Achtung Baby)』には忘れ難い場面がいくつもある。水遊びをすることになっていた4歳の娘ソフィアのバッグにザスクが水着を入れ、ベルリンの保育施設KITAに送り出す場面も、その1つだ。
なんとKITAでは、水着はいらなかったことが判明する。子供たちは全員、真っ裸で水遊びに興じるからだ。
ちなみにKITAはキンダーターゲスシュテッテの略称。保育園と幼稚園を兼ねた施設だ。
ソフィアの通うKITAでは、お泊まり会もあった。想像できるだろうか。4歳児が親と離れて、施設でほかの子供たちと一緒に寝るなんて!
この2つのエピソードだけでも、ドイツとアメリカの子育て事情の違いは明らかだ。アメリカの親たちがこの本を読んだら目からウロコがバラバラ落ちるはず。それと同時に、深い絶望のため息をつくことになる。
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ドイツ式子育ては子供の自由を大幅に認める。幼い子供が危ないことをしてもいいし、親の付き添いなしで出掛けてもいい。失敗したって怒られない。
おかげで子供たちは元気に遊び、すくすく育ち、社会性を身に付ける。「ドイツで学んだ最大の気付きは、子供は親のものではないということだ」と、ザスクは書いている。「小さな子にも本人の意思があり、決定権がある。頭では分かっているつもりだったが、それを実践しているドイツの親たちを見て、自分はちっとも分かっていなかったと気付いた」
とはいえ、ドイツ式子育てを取り入れるのはそう簡単ではない。今のアメリカ式子育ては社会の仕組みにがっちり組み込まれているからだ。
「私たちはコントロールの文化をつくり上げてきた」と、ザスクは嘆く。「安全のため、成績優秀な子供に育てるためだと称して、子供の基本的な権利と自由──リスクを冒し、遊び、自分で考える自由を奪ってきた」
ザスクによれば、その責任は親だけにあるわけではない。「何時間分もの宿題」、競技スポーツと課外活動が「極端に」重視される風潮など「文化的な背景」も大きい。「子供がいつ見知らぬ他人に誘拐されるか分からないといった大げさな報道をするメディア」にも責任があると、ザスクは指摘する(実際にはアメリカでは見知らぬ他人による誘拐は極めて少ない)。