【潜入調査】入店40分待ち!? フランスの高級ブランド店に並ぶ中国人観光客の実態
「そこで、団体客が到着・出発し、買い物の最後に免税手続きを母国語でできる、この別館を造った。さらに、ここでは中国人やアジア人に人気の商品を厳選して取り扱っているので、効率よく買い物ができる。開店以来、以前のような混雑はなくなり、団体客、個人客ともに高い満足度を得ている」
かつて25年前、日本人はギャラリー・ラファイエットの大口の顧客だったという。敷地内に日本語でサービスを受けることのできる「松坂屋」もあったが、惜しくも2005年に撤退した。現在も同デパートでは、日本人に特化したサービスにも力を入れるほど、日本人客は重要な存在だ。とはいえ、時代は移り変わり、今では中国やタイ、ベトナムなどのアジア人の存在感が大きくなったようだ。
ルイ・ヴィトンは入店40分待ち
一方、本館でも、中国人観光客の規模の大きさが伺える。化粧品売り場、高級ブランド品店など、すべての店に複数の中国人販売員がいると言っても過言でないほどだ。
ギャラリー・ラファイエット本館。デパート内の各高級ブランド店には、連日長蛇の列が絶えない。
さらに「ルイ・ヴィトン」、「シャネル」、「グッチ」などの高級ブランド品店では、入店するために約40分待ちの行列ができていた。各言語に対応した販売員による、顧客へのパーソナル・ショッピング・サービスを希望する人たちだ。
列をなしている大半が、20代~30代のオシャレなアジア人の若者。筆者の前で待っていた、上海でエンジニアとして働く20代の男性に話を聞いてみた。
「中国にいる友達と、その彼女に頼まれたバッグを買いに来た。ファッションブログで事前にチェックした商品を3、4個購入する予定だ。12%の免税は大きく、中国で買うよりも安い」
【参考記事】中国人の収入は日本人より多い? 月給だけでは見えない懐事情
店内での買い物の様子を見ていると、彼らの多くが商品の写メを撮り、多機能性メッセージアプリ「ウィーチャット」で中国にいる知人と、何を買うべきか相談しているようだ。
以前、パリの某高級ブランド店で中国人販売員に取材をしたことがあるが、彼女は買い物中にウィーチャットのメッセージ交換をする背景を、こう教えてくれた。
「パリで買い物をする大半の中国人が、中流層の人たちだ。一方で、労働者階級の人たちも、高級ブランド品を1点買うために半年ほどかけてお金を貯める。しかし、旅費が足らないため、フランスに行く知人に商品を買ってきてもらうように頼む傾向がある」
また、高級ブランドが根強く人気の一方で、中国人客の需要は「コト消費」へと変化していると前述のコモロフスキ氏は述べる。
「今、彼らはただ買い物するだけでなく、『経験』を求める傾向にゆっくりと変わり始めている。例えば、ワインを購入するだけでなく、その知識を深めたい人が増えている。そのため、今年中に中国語で開催されるワインの試飲会イベントを弊社で企画している」
中国マネーが、フランスの高級ブランドを救う
マーケティング会社「WalktheChat」の報告によると、世界中の高級ブランド品市場において約3分の1が中国人消費者だという。さらに、経営再建に苦しむ高級ブランドが中国マネーで息を吹き返そうとする傾向もみられる。今年2月には復星国際(中国の投資会社)が老舗高級ブランド「ランバン」を買収、今年6月にはフォーチュン・ファウンテン・キャピタル(中国の投資会社)が仏高級グラスメーカー「バカラ」を買収した。