「胎盤食=カニバリズム」の見解も 胎盤サプリは究極のプラセンタ?
Is Eating Placenta Safe?
産後の母子の安全のためにも慎重な判断を(写真はイメージ) supitchamcsdam-iStock
<自分の胎盤を食べる新トレンドに産婦人科の専門医が待ったをかける>
胎盤(プラセンタ)の成分の美容効果は以前から注目されているが、アメリカでは出産後に自分の胎盤を「食べる」女性が増えている。13年と15年に出産した女優のキム・カーダシアンもその1人だ。
もちろん、そのまま食べるわけではない。体外に排出された胎盤を乾燥させ、サプリメントに加工して服用する。胎盤には鉄分とホルモンが豊富に含れ、産後の母体の回復を助けるとされる。産後鬱病(PPD)に効果があるともいわれている。
ただし、警鐘を鳴らす専門家も少なくない。8月、米産婦人科学会誌に掲載された論文は、「胎盤食」に科学的に実証された効果はなく、健康に害を与えかねないと指摘している。
論文によると、本人の胎盤を服用する効果について科学的に検証した研究は、まだ1件しかない。その研究によれば、胎盤サプリは、産後の女性が1日に必要な鉄分の約24%を補うとされている。
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胎盤食はカニバリズム?
ただし、この研究の被験者は女性14人のみ。わざわざ自分の胎盤でサプリを作るのだから、効果があるという思いが強く、副作用を明らかにしたがらないだろうとも、論文は述べている。「医学的には、胎盤は老廃物だ」と、ウィーン医科大学の婦人科医で論文を執筆したアレックス・ファーは言う。野生では多くの哺乳類が出産後に自分の胎盤を食べるが、人間社会でその習慣を持つ文化はない。ファーはさらに、胎盤は新生児の一部だと主張し、胎盤食をカニバリズム(人肉食)に例える。
科学的な裏付けが乏しいだけでなく、医学的なリスクも懸念されている。リンカーン医療精神健康センターのキーシャ・ゲイサー周産期医療部長によると、「最大の危険は、汚染または感染している胎盤を服用した母親が、(敗血症などの)全身性感染症になる可能性だ」。