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カリフォルニア高速鉄道の入札企業に戦争責任論が浮上
サンフランシスコ-サンディエゴを結ぶ鉄道入札でフランスと日本に「待った」がかかったわけ
ビッグプロジェクト 大宮駅で新幹線を視察するシュワルツェネッガー知事(9月14日) Reuters
日本の鉄道事業者たちはほっと胸をなで下ろしているかもしれない。全米で始まる高速鉄道事業の受注を狙って各国と熾烈な売り込み合戦を繰り広げるなか、頭の痛い悩みが1つ解決されたのだから。
昨年、オバマ米大統領は全米で計13本の高速鉄道事業計画を発表した。そのうち目玉となるのが、カリフォルニア州サンフランシスコとサンディエゴを結ぶ約1300キロ、総額450億ドル(約4兆円)の高速鉄道。これまで日本やフランス、ドイツのほか中国や韓国などが参入を目指してきた。
ところが8月、日本とフランスに懸念材料が浮上。カリフォルニア州議会が、高速鉄道事業の入札参加企業に第二次大戦中の捕虜輸送に関与したかどうかの情報開示を求める法案を可決したからだ。
法案は、42〜44年の間に強制収容所や捕虜収容所などに人々を輸送した鉄道を「所有もしくは運営」していた企業に、当時の状況や戦後補償の有無を文書の形で提示するよう求めている。法案のターゲットは、約7万5000人のユダヤ人をナチスの強制収容所に輸送したフランス国鉄だ。
この法案は日本にも無関係ではない。戦時中、日本軍は国内約130カ所の捕虜収容所に約3万6000人の連合軍捕虜を連行し、捕虜輸送には国鉄が使われた。このため鉄道事業受注を狙うJR東日本(87年に民営化)にも法案が適用される可能性があった。
シュワルツェネッガー州知事は9月30日、今も戦争の傷が癒えない人々に同情の念を示しながらも、「当時、企業が行った行為について州は事実認定する立場にない」と拒否権を発動。法案は成立しなかったが、フランス国鉄は法案の有無にかかわらず求められた以上の情報開示を行うと発表した。
ではJR東日本は? 取材への答えは「コメントする立場にも、情報開示の予定もない」だった。
[2010年10月13日号掲載]