最新記事

カリフォルニア

高速鉄道の入札企業に戦争責任論が浮上

サンフランシスコ-サンディエゴを結ぶ鉄道入札でフランスと日本に「待った」がかかったわけ

2010年10月12日(火)15時47分
小暮聡子(本誌記者)

ビッグプロジェクト 大宮駅で新幹線を視察するシュワルツェネッガー知事(9月14日) Reuters

 日本の鉄道事業者たちはほっと胸をなで下ろしているかもしれない。全米で始まる高速鉄道事業の受注を狙って各国と熾烈な売り込み合戦を繰り広げるなか、頭の痛い悩みが1つ解決されたのだから。

 昨年、オバマ米大統領は全米で計13本の高速鉄道事業計画を発表した。そのうち目玉となるのが、カリフォルニア州サンフランシスコとサンディエゴを結ぶ約1300キロ、総額450億ドル(約4兆円)の高速鉄道。これまで日本やフランス、ドイツのほか中国や韓国などが参入を目指してきた。

 ところが8月、日本とフランスに懸念材料が浮上。カリフォルニア州議会が、高速鉄道事業の入札参加企業に第二次大戦中の捕虜輸送に関与したかどうかの情報開示を求める法案を可決したからだ。

 法案は、42〜44年の間に強制収容所や捕虜収容所などに人々を輸送した鉄道を「所有もしくは運営」していた企業に、当時の状況や戦後補償の有無を文書の形で提示するよう求めている。法案のターゲットは、約7万5000人のユダヤ人をナチスの強制収容所に輸送したフランス国鉄だ。

 この法案は日本にも無関係ではない。戦時中、日本軍は国内約130カ所の捕虜収容所に約3万6000人の連合軍捕虜を連行し、捕虜輸送には国鉄が使われた。このため鉄道事業受注を狙うJR東日本(87年に民営化)にも法案が適用される可能性があった。

 シュワルツェネッガー州知事は9月30日、今も戦争の傷が癒えない人々に同情の念を示しながらも、「当時、企業が行った行為について州は事実認定する立場にない」と拒否権を発動。法案は成立しなかったが、フランス国鉄は法案の有無にかかわらず求められた以上の情報開示を行うと発表した。

 ではJR東日本は? 取材への答えは「コメントする立場にも、情報開示の予定もない」だった。

[2010年10月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン

ワールド

米はウクライナに「譲歩求めすぎ」、ゼレンスキー氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 9
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 10
    反ワクチン政策が人命を奪い始めた
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中