美しければ出世する(かも)
なるほど、元シティバンクのロレンザーナのような女性はセクシーさをアピールすることにより、仕事で得する面があるかもしれない。しかしその半面、「容姿が美し過ぎる」女性は仕事の場で痛い目に遭う可能性があると、企業の採用担当者の47%は考えている。
男性の白髪は「気品」に
1968年、フェミニズム活動家たちはミス・アメリカ・コンテストの会場外で、ゴミ箱にブラジャーを投げ捨てた。当時、仕事の世界で女性は圧倒的に少数派。職場にせよ私生活の場にせよ、「胸の大きな秘書」という役割に押し込められるのはごめんだと、フェミニストたちは訴えた。
10年後、たくさんの女性が働き始めたとき、彼女たちが身に着けていたのは女性的なファッションではなく男性的な肩パッド入りのスーツだった。
今の働く女性たちは平等を手にした(ということになっている)。アメリカの勤労者の半数以上は女性だし、女性が主な稼ぎ手の家庭も多い。肩パッド入りスーツの時代と異なり、会社でもビーチでも、女性らしさを押し殺すことを求められれば女性たちは抵抗するようになった。
とはいえ、「女性的で、しかも力強い」女性が受け入れられるようになったのは仕事以外の世界だけ。職場は変わっていない。
さまざまな調査によると容姿の劣る女性は、秘書など比較的地位の低い仕事には就きにくい。一方で、容姿のいい女性は出世した場合、「セクシーな女性=頭が悪い」という偏見にしばしばぶつかる。容姿の美しい女性は、女性的過ぎて、知性が乏しく、無能だと決め付けられがちだ。この種の偏見は、男性だけでなく女性の間にも根強くある。
話を複雑にしているのが、年齢を重ねることが不利に作用する職場の現状だ。一般に、若い従業員のほうが新しいテクノロジーに通じていて、給料も安くて済み、見掛けもいいと見なされる。有能でも老けて見える求職者が応募してきた場合、採用をためらう企業もあると、本誌が調査した企業の採用担当管理職の84%が答えている。
年齢差別は男女に共通する問題だが、とりわけ不利な立場に置かれるのは女性だ。スタンフォード大学法科大学院のロードが言うように、男性であれば白髪や額のしわのおかげで気品があると見なされるケースもあるかもしれない。しかし年齢のいった女性の場合は周囲から軽んじられたり、自分を若く見せようとしてあざ笑われたりしかねない。
「この二重基準のおかげで、女性たちは永遠に自分の外見を心配し続ける。その上、外見について心配していることを周りに気付かれてはいないかと、不安を感じる羽目になる」と、ロードは言う。
人間は、古代から美の追求に執念を燃やしてきた。現代社会では、その執念が美とは対極にある醜い状況を生み出しているのだ。
[2010年8月 4日号掲載]