アメリカのビーチは糞まみれ
問題は原油流出だけじゃない。人間や動物の排泄物が流入し、ビーチは危険なまでに汚染されている
見えない汚染 実態を知ったらもう海水浴には行けないかも Lucy Nicholson/REUTERS
黒々としたタールの塊も、艶やかな光沢を放つ原油も、暗褐色のムース状に変化した油も大した問題ではない。
アメリカのビーチを汚染する本物の悪魔は、メキシコ湾の惨劇でまき散らされた原油ではなく、人間や動物の排泄物。豪雨や下水道の氾濫によって、有害な病原菌が全米の海岸線に容赦なく流れ込んでいる。
全米の海岸の水質を調べた天然資源保護委員会(NRDC)の第20回年次報告書において、NRDCのデービッド・ベックマンはこう記している。「気分を悪くさせる病原菌から危険な油膜まで、アメリカの海岸は人間を病気にし、海洋生物に害をなし、沿岸部経済を破壊する汚染に苦しみ続けている」
アメリカには大西洋岸、太平洋岸、メキシコ湾、五大湖などのビーチがあるが、週末に海水浴に出かける前には、水中のバクテリア濃度や水質検査の頻度をチェックしよう。また、汚染状態に応じてきちんと注意勧告を出すビーチなら、排泄物まみれの海水浴という不本意な休日を回避できる(NRDCによる人気ビーチの評価はこちら)。
汚染ビーチが最も多いのは五大湖沿岸
全米3000ヵ所のビーチのデータは政府から提供されたもので、水質検査やビーチの閉鎖、勧告などの情報が含まれている(勧告は、水中のバクテリア濃度が注意を呼びかけるべき高さに達しているものの、州や連邦政府が定めるビーチ閉鎖の基準には達していない場合に出される)。2009年には、ビーチが閉鎖されたり注意勧告が出された日が延べ1万8682日あった(ちなみに、原油流出事故によってメキシコ湾岸でビーチが閉鎖されたり注意勧告が出されたのは、延べ2239日しかない)。
NRDCの報告書では、全米の人気ビーチ200ヵ所が、水質、検査頻度、注意勧告の実施状況に基づいて5段階で評価されている。
まず、09年の「ベスト・ビーチ」を見てみよう。
・ミネソタ州(ラファイエット・コミュニティー・クラブ・ビーチ、パークポイント13番街のフランクリン・パーク)
・ニュー・ハンプシャー州(ハンプトン・ビーチ州立公園、ワリス・ロードのワリス・サンズ・ビーチ)
・カリフォルニア州(ボルサ・チカ・ステートビーチ、ハンティングトン・シティービーチ、ニューポート・ビーチ、デーナ・ストランズのソルト・クリーク・ビーチ、カーディフ・ステートビーチとラグーナ・ビーチの一部)
・アラバマ州(ガルフ・ショアーズ・パブリックビーチ。残念ながら、このビーチは原油流出事故の影響ですでに50日以上間閉鎖されている)
一方、水質汚染が極めて深刻なのは以下のビーチだ。
・フロリダ州(ベン・T・デービス・ノース、ディキシー・ベル・ビーチ、モニュメント・ビーチ、ナバレ・パーク、クワイエットウォーター・ビーチ、シモンズパーク、トレジャー・アイランド・ビーチ)
・メーン州(オールド・オーチャード・ビーチ、ロング・サンズ・ビーチ、ショート・サンズ・ビーチ)
・ミシシッピ州(コートハウス・ロード・ビーチ、エッジウォーター・ビーチ、フロント・ビーチ)
・ノース・カロライナ州(ナッグズ・ヘッドの一部)
・ニューヨーク州(ハムリン・ビーチ州立公園、オーチャード・ビーチ、ロバート・モーゼズ・ステートパークビーチ、ロックアウェイ・ビーチとコーニー・アイランドの一部)
・ロード・アイランド州(ナラガンセット・タウン・ビーチ)
・サウス・カロライナ州(マートル・ビーチ、サウス・カロライナ州立公園、スプリングメイド・ビーチ、サーフサイド・ビーチ)