最新記事

米大統領

オバマのXマスパーティー革命

ホワイトハウスのパーティーは音楽から料理まで「チェンジ」満載だった──歴代大統領4人のパーティーに出席した本誌記者の体験リポート

2009年12月21日(月)18時10分
ハワード・ファインマン(ワシントン支局)

完璧なホスト オバマ夫妻は歴代大統領とは一味違うもてなしで記者たちの心をつかんだ(写真は12月13日、ワシントンの国立建築博物館で開かれた別のクリスマスパーティー) 
Yuri Gripas-Reuters

 支持率は低迷し、悲願の医療保険改革を疑問視する声も高まるいっぽう。それでも、バラク・オバマ大統領の推進する「チェンジ」は、少なくともある1点については成功している。ホワイトハウスで行われるパーティーだ。

 パーティーの内容で大統領の資質を判断することはできない。だが、ワシントンの社会はまさにハイスクールそのもの。コミュニケーションが苦手で、見たものすべてに無理やり意味を見出そうとする批判好きのオタクが集まっている。4人の大統領のマスコミ向けパーティーに出席した経験のある私は、典型的なワシントンの住民だ。

 オバマが12月14日に開いたメディア向けのクリスマスパーティーで、まず目を引いたのはジャズだ。私が知るかぎり、ブッシュ父子やビル・クリントンもジャズが嫌いではなかったが、ジャズがメインのパーティーを開いたことはなかった。歴代政権のパーティーでは赤い制服に身をつつんだ海兵隊バンドが譜面台の前に立ち、BGMのようなクリスマスキャロルを演奏していた。

ベース奏者は何と白人女性

 オバマ夫妻は熱心なジャズファンだ。14日の夕刻、ホワイトハウスのイーストルームに招かれたゲストたちは、広くて賑やかなジャズクラブに足を踏み入れたような気分になった(ちなみに、部屋はものすごく混み合っていた)。会場の照明はやや薄暗く、部屋の奥のステージでは5人のミュージシャンがジャズを奏でる。クールでメローで上品な音楽が会場の喧騒に溶けあっていく様子は、まるでニューヨークかシカゴのようだった。

 ベース奏者は白人女性だ。ステレオタイプの発言で申し訳ないが(でも、それがワシントン流だ)、白人女性のベーシストがめずらしいことはジャズファンならわかるだろう。「信じられるチェンジだ(Change you can believe in)」と、ロバート・ギブス報道官が笑いながら私に言った。

 料理も変わった。過去の政権では、部屋の中央の大きなテーブルにエビやローストビーフが山のように盛り付けられていたが、オバマ政権のメニューはよりグローバルだ。

一方の壁沿いでは、寿司バーが大人気だった(確信はないが、ホワイトハウスのクリスマスパーティーで箸が用意されたのは初めてだと思う)。ユダヤ人が好むポテト・パンケーキやスモークサーモンもあり、ユダヤ教の祭典ハヌカーに合わせた料理と解釈できないこともない。

 オバマをひいきする「主要」メディアに批判的な人々は、招待客たちが過去のパーティーよりも心地よく、リラックスした時間を過ごしたのも当然だと思うかもしれない。だが、ホワイトハウスで「自宅のように」くつろぐのは大統領でも無理な話。パーティーのような大規模なイベントではなおさらだ。それでもなお、会場に集った多くの人々はクリントン政権後期やブッシュ2世の時代には考えられなかったほどリラックスしていた。

父ブッシュ夫人は1時間で打ち切り

 私と妻がこの手のイベントに初めて招かれたのは1986年、当時副大統領だった父ブッシュがアメリカ海軍天文台の副大統領官邸で開いたパーティーだった。だが、その際の経験はオバマのパーティーとはまったく違うものだった。

 ブッシュは今も昔も陽気で情熱的な人物で、ホスト役として躁状態に近いほど明るくふるまっていた。だが、妻のバーバラはマスコミを毛嫌いしていた。当時ブッシュの顧問だった故リー・アトウォーターは、マスコミ向けパーティーを開催するようブッシュを説得したが、バーバラは1時間でお開きにするという条件をつけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中