最新記事

米社会

歩行者天国で渋滞解消!ブルームバーグ流ニューヨーク改造計画

ブロードウェイを車両通行止めにして渋滞解消をねらう、起業家市長の奇策

2009年4月7日(火)11時56分
ニック・サマーズ

 ニューヨーク市長であれば、どんな大金持ちでも出勤には地下鉄を使う。公用での移動には自動車を使うが、パトカーの先導つきだから渋滞とは無縁だ。

 しかし、いくら自分とは無縁でも、市長という地位にある以上は都心の渋滞に無関心ではいられない。しかも、市長3選をめざすマイケル・ブルームバーグ(67)は環境保護と大気汚染対策を優先課題にあげている。「ミッドタウンのひどい渋滞が問題なのは誰もが知っている。放置はできない。なんらかの手を打たねば」

 そこでブルームバーグは、マンハッタンを南北に走るブロードウェイの一部を24時間車両進入禁止にする計画を立てた。最近流行の(と同時に物議をかもしてもいる)交通工学の理論を取り入れた大胆な試みといえる。

 ニューヨークだけではない。ロサンゼルスやシカゴでも渋滞は常態化しているが、たいていは車社会の悪しき副産物とみなされている。だがトム・バンダービルトは著書『となりの車線はなぜスイスイ進むのか?』で、渋滞は人間の移動手段が徒歩から牛車へ、自転車へと変わるときにも発生していたと指摘している。

 そもそも、ブロードウェイは昔からマンハッタンの道路網に残るガンだった。1811年にマンハッタンに碁盤の目状に道路を走らせる計画が立てられたとき、南北縦断のブロードウェイだけは斜めのまま残されたのである。

 「ブロードウェイとぶつかるところでは必ず渋滞が起きる」と言うのは、市の交通局長ジャネット・サディクカーンだ。とくにひどいのは、ブロードウェイと7番街が交差するタイムズスクエア。しかもこのあたりは毎日35万6000人の歩行者が繰り出す。

通行料の導入には失敗

 一般に、渋滞が起きるのは需要(自動車の数)に対して供給(道路)が少なすぎるときだ。道路を増やして供給を増やすという解決策もあるが、これにはコストがかかるし、すぐに需要が追いつき追い越してしまう。今では都市づくりの専門家も、新しい道路を造ると渋滞がひどくなりがちであることを認めている。

 一方で経済学者は、渋滞がひどいエリアの通行料を上げて需要を抑える方法を提案してきた。有名なのがロンドンで03年に導入された通行料制度だ。現在、自動車でロンドンの中心部に入るには8ポンドを支払わなければならない。ある調査によれば、これで市内の交通量は16%減った。

 ブルームバーグは07年にニューヨークにも通行料制度を導入する計画を提案したが、翌08年に州議会で否決されてしまった。そこで今度は、州議会の承認を得なくてもいい方法を編み出した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中