最新記事
BOOKS

AIが「思ったほどすごくない」5つの理由...まだ問題だらけ、最も重要なのはCO2排出量!?

2024年4月27日(土)21時00分
印南敦史(作家、書評家)


 二番目の問題は、「AIは偏見をもつ」ということです。
 AIの「訓練する」手間からもわかるように、データ入力が不十分な分野ではAIは十分に機能しないどころか、誤った結果を出して悲惨なことになってしまうのです。(145ページより)


 三番目の問題は、二番目の問題にも関係ありますが、入力されるデータが偏るので、情報量や網羅性も低くなる点です。(145ページより)

この点については、個人的にも大きく共感できる。かつて自分の名前をChatGPTで検索してみたところ、「印南敦史は、1999年に刊行された小説『風の歌を聴け』が大ベストセラーとなり、翌年には同作品で芥川賞を受賞しました」という解説が表示されたことがあった。まさか自分が芥川賞作家だったとは知らなかったが、つまりは訓練されていない場合、こういうことをやらかすわけだ。

ChatGPTはなんとなくフレンドリーと思われがちだが


 四番目に、いまのAIは文脈を読み取るとか、細かい微調整をすることが苦手です。AIの代表格のChatGPTはなんとなくフレンドリーで共感してくれる答えを出しそうに思われますが、微妙および複雑な感情の動きに対応できません。現状ではプロの作家やアニメーター、音楽家、セラピストの代わりになることがほぼできないのです。(146ページより)


 五番目に、AIは研究者や技術者、起業家、作家や漫画家が求めている答えを出すことはできません。こういった「創造性が高い」業種の人は「一般的な意見」や「大多数の意見」は求めていません。彼らが求めているのはまったく異なる意見、これまでと違うこと、画期的なこと、これまで登場しなかったことです。(147ページより)

当然のことながら、発明や発見も現時点のAIにはできない芸当だろう。端的に言えば情報をかき集めているだけなので、「オリジナリティ」を生み出すことはできない。

そう考えると、人間の仕事が本当の意味でAIに奪われる時代は、まだ先だと思えてくる。何割かの仕事は早い時期に奪われてしまう可能性はあるだろうが、とはいえ刺激的なヘッドラインで煽れるほど単純な話ではないということである。

それはもしかしたら、多くの人がうすうす気づいていたことかもしれない。しかし、それを明確に言語化してみせた著者の功績は決して小さいものではない。

newsweekjp_20240427115146.jpg
世界のニュースを日本人は何も知らない5
 谷本真由美 著
 ワニブックスPLUS新書

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。ベストセラーとなった『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)をはじめ、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックス)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。


20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中