最新記事
生成AI

AIの未来を担う男、アルトマンの「正体」ー彼に人類の未来を託して本当にいいのか?

WILL ALTMAN DELIVER?

2024年2月1日(木)12時02分
サム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授、本誌コラムニスト)
AIの未来を担う男、アルトマンの正体

自信に満ちた説得力のある口調でAIの未来を語るアルトマンに、世間は称賛を送り続けてきた HAIYUN JIANGーTHE NEW YORK TIMESーREDUX/AFLO

<チャットGPTで衝撃を与え、突然の解任とスピード復帰をめぐる奇妙なお家騒動で世界の注目を集めたオープンAIのCEO「サム・アルトマン」。その舞台裏で何があったのか>

サム・アルトマンの敗北は、最大の勝利だったのかもしれない。

昨年11月にオープンAIから「追放」された2週間後に、アルトマンは米タイム誌の年間最優秀CEOに選ばれた。

オープンAIを監督する非営利団体の理事会(取締役会に相当)が、CEO解任を突然発表した後も、従業員の大多数はアルトマンを支持。

オープンAIと提携して巨額の投資をしているマイクロソフトのサティア・ナデラCEOは数日のうちに、アルトマンは「同僚たちと共に」同社が新設するAI(人工知能)の研究チームを率いると明らかにした。

アルトマンの解任とスピード復帰をめぐる奇妙なドラマは、彼の名声を別次元に押し上げた。

「AIの顔」の称号をめぐるグローバルな競争で、頭ひとつ抜け出た格好だ。

アルトマンのメンターでもある伝説の投資家ポール・グレアムはこう書いている。

「サムはスティーブ・ジョブズと並んで、私がスタートアップに助言する際に最も頻繁に言及する創業者だ。デザインに関しては『スティーブならどうするだろう』と彼らに問いかけ、戦略や野心については『サムならどうするだろう』と問いかける」

グレアムはアルトマンに会ったとき、ビル・ゲイツもこの年頃はこんな感じだっただろうと思った。

今から15年前のことだ。

しかし今回の解任と復帰劇によって、2人の伝説の創業者にそれぞれ重ねられていたアルトマンの姿は一つになりつつある。

何しろジョブズも自分が創業したアップルを追われたが12年後に復帰し、世界で最も重要な企業に育て上げた。

そして、ゲイツが築いたマイクロソフトの迅速な対応は、アルトマンが人類の未来を託し得る人物だというシグナルを社会に送った。

240206p18_INT_02.jpg

マイクロソフトのナデラCEOは解任騒動でもいち早くアルトマン支持を表明 JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

アルトマンが一時的に更迭された主な理由は、その積極的な資金調達に理事会が腹を立てたからだ。

AIの危険から人類を守る非営利団体として構想された組織が、増大するコンピューティング需要を支える資金を確保するために、さらにはAIが生むであろうカネ(数兆ドル!)を獲得するために、アルトマンは中東の独裁政権の政府系ファンドを含む資金調達に力を入れ始めていた。

企業の利益か、世界の利益か

米議会や一流メディアと親しくなったアルトマンは、耳当たりが良く説得力のある言葉で、自分の会社がAIのリスクに対して非常に慎重であることを説明しようと腐心した。

非営利団体の理事会が営利部門も含めて監督するという非常に特異な組織構造や、アルトマンが規制を歓迎する姿勢、彼自身がオープンAIの株を多く保有していないことを強調し、世間はほぼ称賛一色だった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トルコ中銀が150bp利下げ、政策金利38% イン

ワールド

ウクライナ、米国に和平案の改訂版提示 領土問題の協

ビジネス

米新規失業保険申請、約4年半ぶり大幅増 季調要因の

ビジネス

米国株式市場・午前=ナスダック一時1週間ぶり安値、
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 4
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 7
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 8
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中