AIはもうここまで生活と仕事を変えた...いずれ奪われるこれほど多くの職種
LIFE-CHANGING AI
作品の質という意味では、AIは人間の脚本家の敵ではないとグッゲンハイムは言う。「AIの書く脚本は、えてして当たり障りがなくて面白みに欠ける」と彼は言う。「AIはどんどん改善されてはいる。だが、どんなに優れたAIにも決してまねできない『人間にしかできない何か』がなくなることはない」
もっと大きな問題は、求められる水準はそれほど高くないけれど、多くの書き手にとって収入のかなりの部分を占めるような仕事がAIに奪われてしまうことだ。例えば台本の修正や下書き、ゲームやリアリティー番組の脚本の執筆、テレビ番組のノベライズといった仕事だ。
「明日の番組のために一晩で台本を書き直してほしいといった場合に、ディレクターがチャットGPTに頼んでしまうかもしれない」とグッゲンハイムは言う。
とはいえ、脚本家にとって悪いことばかりではない。近い将来、脚本をAIに読み込ませるだけでテレビ番組や映画を作ることができるようになるかもしれないからだ。プロデューサーもディレクターも俳優も必要ない。「AIは既に、書かれた記述を基にかなり出来のいい動画を作れるようになっている」とグッゲンハイムは言う。
もう1つ、AIに奪われると懸念されているのが、アプリやウェブサイトなどのコードを書く仕事だ。「少なくとも、初心者レベルのコーディングの仕事はチャットGPTの影響を大きく受ける可能性がある」と、フロリダ大学のチアンは言う。
もっとも、失業を心配する必要はないと彼は言う。業界では人手不足が続いている上、AIのコーディングツールをきちんと動かすには人の手が欠かせないからだ。ある研究によれば、AIツールを人間と一緒に活用した場合にコーディングに必要な時間は、人間だけの時に比べて55%も短くなるという。
AIツールが技術的でない指示をもっと理解できるようになれば、未経験者でもスマホ用アプリや業務用のパソコン用プログラムを書けるようになるだろう。「AIはソフトウエア開発者になるハードルを低くした」とフォレスターのカランは言う。プロの開発者は、AIだけでは手に負えないような高度なソフトウエア開発を担うようになると彼は言う。