AIはもうここまで生活と仕事を変えた...いずれ奪われるこれほど多くの職種
LIFE-CHANGING AI
ANDRIY ONUFRIYENKO/GETTY IMAGES
<医療や介護、電話セールス、法律相談、雇用......。AI革命がもたらすのは明るい未来か暗い未来か>
近年のAI(人工知能)の進歩は、専門の科学者や技術者の予想も超えている。「数年前には、こんなに早く、これほどの進歩が実現するとは想像していなかった」と、AIの実用化について研究しているフロリダ大学のチョー・チアン助教は言う。
とりわけ最近は、オープンAI社の「チャットGPT」、マイクロソフトの「Bing(ビング)」、グーグルの「Bard(バード)」など、目を見張るほど高い能力を持った対話型AIプログラムが相次いで送り出されたことにより、AIへの興奮と懸念が高まっている。
AIは今後、経済に大きな影響を及ぼし、さらには教育から娯楽、そして医療まで、人々の暮らしのほぼ全ての側面を様変わりさせると予想されている。その過程で、仕事の生産性が高まる人がいる一方で、職を失う人も出てくるだろう。
「今の時点でAIの能力は魔法のように思えるかもしれないが、当たり前に感じられる時代がすぐにやって来る」と、調査会社フォレスター・リサーチでAIを専門としているアナリストのローワン・カランは言う。「AIがもたらす変化の全容は、まだ私たちには見えていない」
AIがどんな変化をもたらすかを正確に予測できる人はいないが、その変化が大規模で広範囲に及ぶという点では、専門家の見方が一致している。具体的に紹介すると......。
■医療の改善
4月に英科学誌ネイチャーに発表された研究によると、心臓エコー検査の読影に関して、AIプログラムは人間の技師と同等、もしくはそれ以上の成果を上げたという。
同様の研究結果はほかにもある。患者の検査画像、採取した組織や細胞のサンプル、医療記録を参照して癌などの病気を発見することに関して、AIのスキルが既に人間と肩を並べ、場合によっては人間を凌駕していることを示す研究が、相次いで発表されている。
AIは、医師と患者のやりとりを記録して要約したり、膨大な文献を調べて薬の飲み合わせなどの重要な情報を明らかにしたりすることにもたけている。
ヒポクラティックAI社が開発した新しいAIシステムは、患者とのやりとりを任せることを目的としたプログラムだ。入院患者の気持ちになって温かみのある会話もできるという。このプログラムは、看護学、栄養学、泌尿器科学など100分野以上の資格認定試験で、多くの人間の専門家を上回る成績を上げている。
この先、こうしたAIプログラムの性能はさらに向上し、コストは低下するだろう。その一方で、医師不足が解消される見通しは立っていない。このような状況の下、未来の医療の現場ではAIの活用がいっそう広がりそうだ。