最新記事

動物

「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明した「犬が本当に考えていること」

飼い主とハイタッチをする犬

ハイタッチをする犬でも飼い主に忠誠心をもたない!? Zorica Nastasic - iStockphoto


犬と接するときはどんなことに気を付けるべきか。ドッグトレーナーの鹿野正顕さんは「犬を擬人化してはいけない。あくまで動物であり、常に本能で動いている。人間側の一方的な思いや価値観で犬と接してはいけない」という――。

※本稿は、鹿野正顕『犬にウケる飼い方』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです。

犬は本能を理性でコントロールできない

犬という動物を知るうえで、大前提として知っておきたいのは、五感の感覚が人間とはまったく違うこと。そして脳の働きも人間とはまるで違うということです。

これは当たり前のことなのですが、ともすれば、犬と家族同様に暮らしていくうちに、犬も人と同じようにものを見たり聞いたりし、人と同じような感情を持つように思い込んでしまう方もいます。

同じ空間で生活していても、犬は人間とは違う世界で生きています。

まず感覚受容器の構造が違うため、人と同じ環境にいても、目、耳、鼻から受け取る情報が人間とはまったく異なっているのです。

感覚受容器は、外部からの刺激を脳に伝えて行動を促す役割があります。

動物の行動には、それを促す何らかの刺激が必ず存在し、五感が敏感であるほど刺激を受けやすいということになります。

その行動を司(つかさど)るのが脳ですが、人の脳と、犬などの哺乳類の脳では大脳皮質(大脳の表面部分)のとくに前頭葉の働きが大きく違います。

前頭葉には、「思考・判断・情動のコントロール・行動の指令」という大事な役割がありますが、犬の前頭葉の働きは鈍く、簡単に言うと「犬は人のように本能を理性でコントロールすることが難しい」のです。

犬は哺乳動物のなかでも「頭がいい・かしこい動物」とされていますが、大脳皮質のうち前頭葉の占める割合は、人は30%、犬は7%、ネコは3%となっています。つまり、犬は人間のように何か考えに基づいて行動したり、意図的に行動をコントロールすることはほとんどできないのです。

人にいやがらせをすることはない

そうした脳の働きをふまえて、犬の行動や認知能力を見ていくと、次のような特徴があることがわかってきます。

●感情をコントロールすることが苦手
犬は、高ぶった気持ちを自分で落ち着かせたり、がまんするなど、情動・感情のコントロールが苦手です。

●善悪の判断はしないし、人社会のルールも理解できない
人間のモラルや道徳観とは無縁なので、自分の行為の善悪の判断をしません。基本、人の都合にはおかまいなしです。人社会のルールをそのまま押し付けようとしても、守るべき理由を理解できません。

●先のことを予測して考えることができない
これをやったらどうなるか、という先のことを考えることができません。たとえば、子ども用のぬいぐるみの腕を噛んで振り回したら、腕が取れてボロボロになる......といった行動の先の結果を予測することはしないし、できないのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

不確実性の「劇的な高まり」悪化も=シュナーベルEC

ワールド

マスク氏、米欧関税「ゼロ望む」 移動の自由拡大も助

ワールド

米上院、トランプ減税実現へ前進 予算概要可決

ビジネス

英ジャガー、米国輸出を一時停止 関税対応検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 10
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中