フェイスブックに内部告発「ザッカーバーグが知っていたこと、やらなかったこと」
What Zuckerberg Knew
では、彼のどこがいけなかったのか。
それはフェイスブックの各種プラットフォームがユーザーに害を及ぼしている証拠が出てきたときに、ユーザー離れや自社の成長への悪影響を恐れて軌道修正を怠ったことだ。
その最も分かりやすい例は、2018年のニュースフィードのデザイン刷新かもしれない。企業や政党よりも、友人や家族の投稿を優先的に表示するよう変更したのだ。
背景には、同社が2016年の米大統領選後に直面した批判(ケンブリッジ・アナリティカ社に流出したユーザーの個人情報が選挙に利用された問題など)があった。
ザッカーバーグは、対立をあおる政治やニュース関連のコンテンツを減らし、親しい人同士の「意義ある交流」を促進することが目的だと語っていた。
だがWSJは、刷新にはもう1つの目的があったと指摘する。2017年に入ってから低下していたユーザーエンゲージメントを活性化させること(「いいね」やコメント、投稿を促すこと)だというのだ。
目的はどうあれ、この刷新はユーザー同士の分断を深めることがすぐに社内調査で明らかになった。投稿の共有を促す新アルゴリズムにより、怒りに満ちた、扇動的な投稿が広まりやすくなったのだ。
コンテンツ制作者やヨーロッパの政党からは、ネガティブな投稿がユーザー間に広く浸透しているという声が上がるようになった。社内のリサーチャーたちは、この有害な効果への対応策をいくつか進言した。
だがザッカーバーグはユーザーエンゲージメントの低下を恐れ、そのほとんどを採用しなかった。
進言された対応策の1つが、「ダウンストリームMSI」と呼ばれるアルゴリズムの機能の一部を弱めることだった。これはより多くの「いいね」やコメントをもらう可能性のある投稿を拡散させるもので、弱めた場合には誤情報の拡散を防げる可能性がある。
実際、エチオピアやミャンマーでこの変更は行われている。どちらもフェイスブックが民族間の暴力をたき付けていると批判された国だ。だがザッカーバーグは、これを他地域には適用しないと決めた。
ハウゲンのリークで注目された一件も似た経過をたどった。
WSJによれば、社内調査でインスタグラム利用者の10代女性の3人に1人が自分の体の尊厳を傷つけられ、メンタルヘルスを悪化させていた。ザッカーバーグはこの調査の社内プレゼンテーションを確認したのに、有効な対策を取らなかったようだ。