コロナ禍における遠隔教育──新型コロナウイルスで教育のICT化は進むか
しかし、遠隔教育を実施する現場では、ハード・ソフト両面において課題が山積している。「遠隔教育の推進に向けた施策方針」では、新型コロナウイルスの感染拡大以前においての遠隔教育の実施に際するハード面の課題として、(1)遠隔教育を行うためのICT環境の整備や体制の構築が不十分であること、(2)指導計画等の作成や教材の準備に多くの時間や手間がかかることなどが、ソフト面の課題として、(1)教師から児童生徒への適時・適切な指導や評価が困難であること、(1)不測の事態が生じた場合の迅速な対処が困難であること、などが挙げられている。
さらに、遠隔教育を実施するにあたっては、規制として、(1)受信側*3にも教員配置が必要である(文部科学省通知)、(2)原則出席扱いとならず、評価に反映されない(義務教育)、取得できる単位数に上限がある(高校、大学)(学校教育法施行規則等)、(3)教育を目的としていてもオンライン上での資料等の使用には著作権者からの個別許諾が必要である(旧著作権法*4)、等が設けられており、遠隔教育実施のハードルを高くしていた。
コロナ禍でもオンライン教材を活用した学習は29%にとどまる
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、政府は一人一台端末配備の前倒しでの実現や特定の科目の授業時間数の柔軟な運用を行う方針だ。令和2年度第1次補正予算において2,292億円が計上され、一人一台端末の実現は、年度内での実施が図られることとなった。
政府は4月20日に閣議決定した緊急経済対策の中で、遠隔教育について実施すべき事項について言及している。ICT環境の早急な整備や遠隔授業に係る要件や単位取得数の見直しなど環境整備が実施される。また、オンラインカリキュラムの整備のような児童生徒の自宅学習の支援も行う方針だ[図表2]。このような施策により、子供たち誰一人取り残すことなく、最大限に学びを保障することを目指す。
しかし、文部科学省が4月16日に公表した調査結果によると、臨時休校を行っている自治体のうちオンライン教材を活用した学習指導を実施しているのは29%、受信側に教員はいないもののリアルタイムで講義を行い、教師と児童生徒双方からのやりとりが可能といった対面に近い状態での授業を行う「同時双方向型」でのオンライン指導はわずか5%の実施にとどまっている[図表3]。新型コロナウイルスの流行以後においても遠隔教育はなかなか広がっていない。
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*3 机間巡視や安全管理を行う観点から、授業を受ける児童生徒のいる受信側には原則教員を配置するべきとされている
*4 旧著作権法第35条、なお改正著作権法は4月28日に施行されている。