フェイスブックの顔認証システムが信用できない理由
HOW WILL FACEBOOK USE ITS FACIAL DATA?
JOHN LUND-THE IMAGE BANK/GETTY IMAGES
<世界最大と自負する顔認証データベースを構築したフェイスブック。「ディープフェイス」は不正利用しないとザッカーバーグは言うが......。本誌「顔認証の最前線」特集より>
フェイスブックには毎日、大量の写真がユーザーからアップロードされる。設定画面の「写真や動画による顔認識を行いますか?」の問いに「いいえ」と答えていない限り、フェイスブックの顔認証システムは人間の顔を見つけるべく画像をスキャンする。
そしてユーザーが「これは誰?」の問いに答えて友人の名をタグ付けすることで、システムはさらに賢くなっていく。ディープラーニングを用いたフェイスブックの顔認証システムは「ディープフェイス」と呼ばれ、同社が「世界最大」と自負する顔のデータベースを構築している。
アマゾンの顔認証システム「レコグニション」が、捜査機関を含む顧客からデータの提出を受けて解析を行うのと異なり、ディープフェイスに外部のデータは要らない。私たちユーザーが写真を、それもさまざまな角度から、時期も服装も髪形も化粧も異なる顔を写したものを、日々アップロードしているからだ。写っている人物が誰かも、フェイスブックはお見通し。自分でタグ付けしなくても、友人の誰かがやっているかもしれない。
現在、フェイスブックの顔認証システムはタグ付けの際に名前を提案することにしか使われておらず、深刻な懸念を抱く人もほとんどいない。
だがアメリカでは、各州が持っている運転免許証の写真データを移民関税執行局(ICE)が顔認証技術で解析しているといった事例に対し、懸念の声が高まっている。サンフランシスコ市議会は5月、警察など行政機関が顔認証技術を使うことを禁じる条例案を全米で初めて可決した。有色人種は誤って認識される確率が高いという研究がいくつかあるからだ。
行政による顔認証技術の利用を制限しようという動きは、連邦レベルでも出ている。下院では5月、顔認証技術に関する公聴会が開かれ、何の規制もない現状に共和・民主両党の議員が懸念を表明した。7月にはワシントン・ポスト紙が、FBIやICEは犯罪の容疑者か否かにかかわらず本人への告知や了解なしに州に写真データの請求を行っており、一部の州では顔認証に使うために不法移民に運転免許の取得を奨励していると報じて話題になった。
だが行政の顔認証技術の利用は、基本的に民間企業の技術やデータに依存している。フェイスブックの顔認証システムが同じ俎上に載せられるべきなのは、そうした理由からだ。
例えば国家安全保障局(NSA)は、情報収集活動の一環としてフェイスブックやグーグル、マイクロソフトといったテクノロジー企業のデータを利用していたことが元職員のエドワード・スノーデンの内部告発で明らかになっている。警察やFBIはアマゾンのレコグニションを使っており、アマゾンの従業員や政府による監視強化を懸念する人々の反発を招いている。