最新記事

顔認証の最前線

フェイスブックの顔認証システムが信用できない理由

HOW WILL FACEBOOK USE ITS FACIAL DATA?

2019年9月13日(金)11時10分
エイプリル・グレーザー

JOHN LUND-THE IMAGE BANK/GETTY IMAGES

<世界最大と自負する顔認証データベースを構築したフェイスブック。「ディープフェイス」は不正利用しないとザッカーバーグは言うが......。本誌「顔認証の最前線」特集より>

フェイスブックには毎日、大量の写真がユーザーからアップロードされる。設定画面の「写真や動画による顔認識を行いますか?」の問いに「いいえ」と答えていない限り、フェイスブックの顔認証システムは人間の顔を見つけるべく画像をスキャンする。

20190917issue_cover200.jpgそしてユーザーが「これは誰?」の問いに答えて友人の名をタグ付けすることで、システムはさらに賢くなっていく。ディープラーニングを用いたフェイスブックの顔認証システムは「ディープフェイス」と呼ばれ、同社が「世界最大」と自負する顔のデータベースを構築している。

アマゾンの顔認証システム「レコグニション」が、捜査機関を含む顧客からデータの提出を受けて解析を行うのと異なり、ディープフェイスに外部のデータは要らない。私たちユーザーが写真を、それもさまざまな角度から、時期も服装も髪形も化粧も異なる顔を写したものを、日々アップロードしているからだ。写っている人物が誰かも、フェイスブックはお見通し。自分でタグ付けしなくても、友人の誰かがやっているかもしれない。

現在、フェイスブックの顔認証システムはタグ付けの際に名前を提案することにしか使われておらず、深刻な懸念を抱く人もほとんどいない。

だがアメリカでは、各州が持っている運転免許証の写真データを移民関税執行局(ICE)が顔認証技術で解析しているといった事例に対し、懸念の声が高まっている。サンフランシスコ市議会は5月、警察など行政機関が顔認証技術を使うことを禁じる条例案を全米で初めて可決した。有色人種は誤って認識される確率が高いという研究がいくつかあるからだ。

行政による顔認証技術の利用を制限しようという動きは、連邦レベルでも出ている。下院では5月、顔認証技術に関する公聴会が開かれ、何の規制もない現状に共和・民主両党の議員が懸念を表明した。7月にはワシントン・ポスト紙が、FBIやICEは犯罪の容疑者か否かにかかわらず本人への告知や了解なしに州に写真データの請求を行っており、一部の州では顔認証に使うために不法移民に運転免許の取得を奨励していると報じて話題になった。

だが行政の顔認証技術の利用は、基本的に民間企業の技術やデータに依存している。フェイスブックの顔認証システムが同じ俎上に載せられるべきなのは、そうした理由からだ。

例えば国家安全保障局(NSA)は、情報収集活動の一環としてフェイスブックやグーグル、マイクロソフトといったテクノロジー企業のデータを利用していたことが元職員のエドワード・スノーデンの内部告発で明らかになっている。警察やFBIはアマゾンのレコグニションを使っており、アマゾンの従業員や政府による監視強化を懸念する人々の反発を招いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ステランティスCEO、米市場でハイブリッド車を最優

ビジネス

米ダラー・ゼネラル、通期の業績予想を上方修正

ビジネス

実質消費支出10月は3.0%減、6カ月ぶりマイナス

ワールド

マラリア死者、24年は増加 薬剤耐性や気候変動など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中