インド13億人の「生体認証」国民IDに、知られざる日本企業の貢献
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指紋、顔、虹彩認証を組み合わせ、1日最大200万件を登録
そんなアドハーの肝となるのは、本人確認のための高い認証技術。公共サービスや銀行などで使われるため、IDが重複して発行されるようなことがあってはならないからだ。そこで、アドハーでは大規模な生体認証システムの導入を決定した。そのシステムを提供しているのが日本のNECなのだ。
同社は指紋、顔、および虹彩認証を組み合わせた、超高精度なマルチモーダル生体認証でアドハーを支えている。アドハー制度の入り口として活用されているNECの技術は、正確なIDシステム構築に欠かせないものとなっているのである。
インド政府がNECを採用した理由は、同社が開発するそれぞれの生体認証技術が世界最高レベルにあるという点にある。NECは、米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した指紋認証技術と顔認証技術のベンチマークテストで、世界1位の照合精度を有するとの評価を獲得している(顔認証技術は、2009年以来、4回連続1位を獲得)。虹彩認証においても、精度評価テスト(IREX IX)で第1位の照合精度であると評されている。
とはいえ、どの認証技術にも課題はある。指紋は広く使われる認証技術だが、高齢者や乾燥指紋の人などには不向きだと言える。顔認証は利便性が高い反面、精度面で指紋や虹彩に劣る。虹彩は精度が高いが、指紋や顔ほど普及していない。
だからこそ「これらを組み合わせることで、それぞれの弱みを補完し、精度の高い照合を実現することができるのです」と、NECのセーファーシティソリューション事業部で主席事業主幹を務める伊藤正人氏は話す。「指紋と顔、虹彩のマルチモーダル生体認証を採用した背景には、超大規模データベースで二重登録を防ぐために、より高い精度が求められたことがあります」
しかも世界第2の人口を誇るインドでは、登録作業のスピードも重要になってくる。アドハーでは、登録済みの生体情報と新規登録希望者の生体情報の照合を、迅速に行う必要がある。NECの技術では、その照合を高精度かつ効率的に行い、なりすましの防止や手続きの簡素化を実現している。
「ピーク時には1日に200万件の登録を処理することもあります。現在まで、速度や精度の面で、実運用に耐えうる二重登録防止を達成しています」と、伊藤氏は語る。
このように、NECは世界に誇る生体認証技術を結集させることで、アドハーの登録プロセスを支えているのである。
実は、NECの生体認証技術における開発の歴史は古い。例えば、指紋認証技術なら約半世紀も前から研究開発を行ってきた。伊藤氏によれば、「生体認証を用いた公共サービス分野でのNECの取り組みは四半世紀前から行っています。古いところでは、南アフリカの国民IDやボリビアの選挙民IDでも、NECの生体認証が採用されています」という。
現在では、犯罪捜査から出入国管理、コンサート会場の本人確認まで、世界70カ国以上で700カ所を超えるシステム導入の実績がある。
ただし、そんなNECにとっても、インドほどの大規模な生体認証登録――そして、マルチモーダルの複合認証――は前代未聞だったという。