仕事を奪うAIと、予想外の仕事を創り出すAI
HOW AI CREATES JOBS
AIがつくり出す新たな仕事を探すことにかけては、今ある就職支援ツールよりもAIのほうが役立つはずだ。将来、AIは人々の能力や夢、希望を把握し、世界中からそれに合った職を探してくるだろう。
米労働省によれば、アメリカには約680万の失業者がいるが、空いているポストも600万人分ある。強力なAIのマッチングシステムがあれば適材を適所に配置でき、この雇用格差を劇的に減らせるだろう。
AIの時代にも活躍できるのは、人付き合いや創造的思考、複雑なインプットを要する意思決定、共感や探究といった「人間ならでは」の能力を生かす仕事に就いている人だ。
最後に勝つのは「善い魔女」
AIは手元にないデータについて考えることができない。ある人が何を好むかというデータに基づき、その人がフェイスブック上で見たいものを予測するのは得意だが、とんでもないものを好きになる可能性は予測できない。意外性を愛するのは人間だけだ。
また、AIの支持派によれば、AIは人間と競うのではなく協力する存在だ。1年ほど前、私は癌研究者のソレダ・セペダから、日々の研究にAIをどう取り入れているかを聞いた。セペダによれば、研究助手が2週間かけてやっと分析できる量のデータとテキストを、AIソフトは2秒で終わらせる。おかげで助手は頭を使う仕事をする余裕ができ、治療法の研究速度が上がったという。
AIは協力者として喫緊の課題を解決するチャンスをもたらすだろう。癌を撲滅し、気候変動を緩和し、人口爆発を制御し、人類を火星に送り込む手助けもするかもしれない。
もちろん、全てが成功するとは限らないが、AIなしでは実現できないことも確かだ。つまり、人類にとってAIの開発より悪い唯一のことは、AIの開発をやめることだ。
おとぎ話の世界には悪い魔女と善い魔女が登場するが、AIは悪い魔女(破壊者)にも善い魔女(創造者)にもなり得る。どうせ最後には善い魔女が勝つのだが、おとぎ話の住人はそれを知らずにうろたえる。
今の私たちもそんな状態にあるのだろう。だからAIという怪物から逃げたがる。でも、明日のAIは白馬の騎士に見えるかもしれない。
<ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「世界経済入門2019」掲載>
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