最新記事

世界経済入門2019

仕事を奪うAIと、予想外の仕事を創り出すAI

HOW AI CREATES JOBS

2018年12月27日(木)17時00分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジーコラムニスト)

AIがつくり出す新たな仕事を探すことにかけては、今ある就職支援ツールよりもAIのほうが役立つはずだ。将来、AIは人々の能力や夢、希望を把握し、世界中からそれに合った職を探してくるだろう。

米労働省によれば、アメリカには約680万の失業者がいるが、空いているポストも600万人分ある。強力なAIのマッチングシステムがあれば適材を適所に配置でき、この雇用格差を劇的に減らせるだろう。

AIの時代にも活躍できるのは、人付き合いや創造的思考、複雑なインプットを要する意思決定、共感や探究といった「人間ならでは」の能力を生かす仕事に就いている人だ。

最後に勝つのは「善い魔女」

AIは手元にないデータについて考えることができない。ある人が何を好むかというデータに基づき、その人がフェイスブック上で見たいものを予測するのは得意だが、とんでもないものを好きになる可能性は予測できない。意外性を愛するのは人間だけだ。

また、AIの支持派によれば、AIは人間と競うのではなく協力する存在だ。1年ほど前、私は癌研究者のソレダ・セペダから、日々の研究にAIをどう取り入れているかを聞いた。セペダによれば、研究助手が2週間かけてやっと分析できる量のデータとテキストを、AIソフトは2秒で終わらせる。おかげで助手は頭を使う仕事をする余裕ができ、治療法の研究速度が上がったという。

AIは協力者として喫緊の課題を解決するチャンスをもたらすだろう。癌を撲滅し、気候変動を緩和し、人口爆発を制御し、人類を火星に送り込む手助けもするかもしれない。

もちろん、全てが成功するとは限らないが、AIなしでは実現できないことも確かだ。つまり、人類にとってAIの開発より悪い唯一のことは、AIの開発をやめることだ。

おとぎ話の世界には悪い魔女と善い魔女が登場するが、AIは悪い魔女(破壊者)にも善い魔女(創造者)にもなり得る。どうせ最後には善い魔女が勝つのだが、おとぎ話の住人はそれを知らずにうろたえる。

今の私たちもそんな状態にあるのだろう。だからAIという怪物から逃げたがる。でも、明日のAIは白馬の騎士に見えるかもしれない。

<ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「世界経済入門2019」掲載>

※ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「世界経済入門2019」好評発売中。こちらからもお買い求めになれます。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=

ワールド

EXCLUSIVE-米国、ベネズエラへの新たな作戦

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中