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温暖化を加速させるホットハウス現象【新説】「ホットハウス現象」が地球温暖化の最後の引き金に
HOTHOUSE EARTH
JOSEPH GIACOMIN-IMAGE SOURCE/GETTY IMAGES
<たとえパリ協定の排出基準を守っても、歯止めなき温暖化が進行し多くの土地が居住不能に──。衝撃の新説が波紋を呼んでいる。本誌9/11発売号「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集の記事「地球を襲うホットハウス現象」より一部抜粋>
※本誌9/18号(9/11発売)は「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集。驚異的な暑さと異常気象が世界を襲うなか、温暖化対策の前提や道筋が大きく揺らいでいる。目指すべき新たな道を見いだすカギは?
この夏、世界の多くの地域が記録的な熱波に襲われ、北極圏ですら高温の日が続いた。しかし、ひょっとすると、これはまだ入り口にすぎないのかもしれない。最近、これまでの気候変動をめぐる概念を覆す新説が登場し、注目を集めている。
それによると、たとえ今から温室効果ガスの排出量を削減しても、既に始動している温暖化が自然界のほかの現象の引き金を引き、その結果として制御不能な温暖化が進行する可能性があるという。
温暖化によりアマゾンの熱帯雨林が縮小したり、北極の永久凍土と南極の海氷が解け出したりすると、熱帯雨林や永久凍土や海氷に貯蔵されていた二酸化炭素(CO2)が大気中に放出され始め、温暖化の進行に歯止めが利かなくなるというのだ。この現象は「ホットハウス・アース(温室化した地球)」と名付けられている。
現在、世界の平均気温は産業革命前に比べて約1度高く、10年間に約0.17度のペースで上昇している。気候変動による最悪の事態を避けるためには、産業革命前に比べた気温上昇を2度までに抑えることが不可欠だと、大半の専門家は考えている。気候変動に関する15年のパリ協定でも、この目標の達成に向けて世界の国々が合意した。
しかし、8月6日に米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された論文によると、世界の国々がパリ協定で合意されたCO2排出量を守っても、この目標を達成することはこれまでの想定以上に難しそうだ。最悪のシナリオでは、ホットハウス現象により世界の平均気温は産業革命前と比べて4~5度高くなり、海水面は最大で60メートル上昇するという。
なぜ、そんなことが起きるのか。地球の気温を左右する要因は、人間が排出する温室効果ガスだけではない。ホットハウス説では、人間の活動が原因で2度の温暖化が進んだ場合、自然界のさまざまな現象(「フィードバック」と呼ばれる)が動き出し、それが極度の温暖化に拍車を掛けかねないとされる。人間が温室効果ガスの排出をやめても、その状況は止められない可能性があるという。
この新しい研究は、10のフィードバックに着目している。その中には、一定の「臨界点」を超えると、一挙に大きな変化を引き起こしかねないものも含まれている。このようなフィードバックが大きな変化を生み出すまでには、たいてい何世紀もかかるが、いくつかは今後100年の間に進行し始めても不思議はない。
10のフィードバックには、夏季の北極と南極における海氷の減少による気温の上昇、北極と南極の氷床の減少、陸上と海洋の生態系によるCO2吸収の減少、海洋におけるバクテリア増殖によるCO2の放出、アマゾンの熱帯雨林の大規模な枯死によるCO2の放出などが含まれる(25ページ図参照)。
止められないドミノ現象
「ドミノ現象が起きる恐れもある」と、論文の共同執筆者であるストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム所長は指摘している。「1つの要素が限界を超えれば、ほかの要素も加速し始める。そうしたドミノ現象を止めるのは、不可能とまではいかなくても、非常に困難かもしれない。ホットハウス・アースが現実化すれば、地球上の多くの場所が人間の住めない土地になる」
【参考記事】2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判
※本記事は、本誌9/18号(9/11発売)「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集の記事「地球を襲うホットハウス現象」を一部抜粋したものです。特集号はこちらからお買い求めになれます。
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