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地球環境

気候変動と生態系の危機が、さらなる環境破壊を招く...地球を襲う「三重債務危機」のメカニズム

2025年1月4日(土)16時23分
ベラ・ソンウェ(経済学者)、グイド・シュミットトラウブ(企業幹部)

三重の債務危機が最貧国の経済・政治的安定を脅かす

自然生態系は人類の生存に不可欠な雨の源でもある。ブラジルやオーストラリアでは、森林伐採によって地元の農業が脅威にさらされている。森林破壊率が世界最高水準のナイジェリアではこの5年間に、伐採や自給的農業、薪収集によって、残存する森林の半分以上が失われている。

「自然債務」は猛スピードで膨らんでいる。森林破壊や魚類乱獲を伴う産業に年間7兆ドルが流れ込む一方、自然に優しい事業の資金規模は22年時点でわずか2000億ドルだった。

通常の政府債務に気候債務と自然債務を加えた三重の債務危機は、最貧国の経済的安定と政治的安定を脅かす。債務を削減しない限り、気候レジリエンス(回復力・強靭化)や環境修復への投資は不可能だ。自然の損失に歯止めをかけ、温暖化ガスを削減できなければ、気候変動の「ティッピングポイント」(後戻りできない臨界点)を超えるリスクに直面し、気候債務危機とマクロ経済の悪化につながる。

国際社会は途上国の債務救済に向けた20カ国・地域(G20)の「共通枠組み」の下で結束し、低金利の長期融資(または迅速な債務再編)によって持続可能な成長を促す国際投資協定を推進する必要がある。

目標達成には、決断力のあるリーダーシップが欠かせない。G20は再度のインフレ率急上昇を招くことなく、世界経済の成長を刺激する強固な排出量削減目標を採用して、財政責任を重視する姿勢を示すべきだ。

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