最新記事

ニュースデータ

同性愛への寛容度でわかる日本の世代間分裂

2015年9月29日(火)16時15分
舞田敏彦(武蔵野大学講師)

 若者が先進的な価値観を持つのは常だが、ここまで世代差が大きい社会は他にあるだろうか。もっと多くの国を含めて、20代の若年層と60歳以上の高齢層の平均点を比較してみた。横軸に若年層、縦軸に高齢層の寛容度の平均点を取った座標上に57の国を配置したグラフが次の<図2>だ。

maitachart150929-02.jpg

 フィリピンやインドのような例外もあるが、大半の国では若年層の方が高齢層より寛容度が高い(実斜線よりも上)。点斜線よりも上は世代差が3ポイント以上ある国だが、日本はこのゾーンに位置している。日本の若年層の平均点は7.3点、高齢層は3.4点で、4ポイント近くも開いている。同性愛に対する寛容度の世代差が、世界で最も大きい社会だ。

 日本の若年層の平均点は調査対象国中5位で、同性婚が認められている国々と同レベルだ。若者の政治参画が進めば、同性愛への差別や偏見はなくなるのではないか、という希望的観測も持てる。先の同性パートナーシップ条例が、若者の街・渋谷で採択されたことは象徴的だろう。

 同性愛だけでなく、婚前交渉や離婚に対する寛容度の世代差も大きい。戦後の短期間に社会規範が大きく変化した日本では、様々な意識や価値観の世代差が大きい。現在、日本社会を動かす指導者層の多くは高齢者だが、若者の意向をもっと取り入れることで社会が急速に変化する可能性は十分にある。

 例えば政治参画の代表的な手段は選挙だが、投票所に足を運ぶ人の年齢構成は高齢層に偏った完全な逆ピラミッド型になっている。今後、選挙年齢が20歳から18歳に引き下げられ、ネット選挙の導入が進められる中で、投票動向がどう変わるかが注目される。

 今、国会議員や大学教員など「指導的位置に占める女性の比率」が注目され、「2020年までに30%」という数値目標が設定されている。これと並行して、若者の意見を社会にどう反映させるかについても、もっと関心が持たれるべきだろう。それは、社会変革の可能性のバロメーターでもあるからだ。

<資料:『世界価値観調査』(2010~2014)

[筆者の舞田敏彦氏は武蔵野大学講師(教育学)。公式ブログは「データえっせい」、近著に『教育の使命と実態 データから見た教育社会学試論』(武蔵野大学出版会)。]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中