最新記事

在日外国人

ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(3/3)

Story of a Chinese Woman Living in Japan, Part. 3

2015年9月11日(金)18時43分

 日本の公立保育園の多くは、ママへの教育を主としています。でも私は、ママがうれしくて幸せでありさえすれば、子どももきっと幸せだと考えます。シングルマザーに一息入れる暇をあげたら、子どものためにもっと素敵なパパを探せる。そうしたら、全員そろった円満な家庭に変えられるのです。

 私もそうでした。最初の日本人の夫とは結局離婚して、自分の子どもを育てながら保育園の子どもたちを見ていました。私にも、安心できるスペースと、息子のためにいいパパを探すことが求められていた。一家にはパパの存在がなければならないのです。現在の夫も日本人で、人柄もいい。いまはとても幸せです。再婚してから2人の子にも恵まれました。最初の息子も、私たちといっしょに幸せに暮らしています。

日本の長所で中国の短所を補う教育

 日本の保育園にも、多くの長所があります。たとえば幼少期から、人に接するときの態度、マナー、自分でできることは自分でやること、相手の気持ちを理解することなどを子どもに教えます。中国の子どもがなかなか学べないことです。いま中国では、多くの子どもが過保護に育ち、勉強ができれば何もしなくていいとされています。衣服を着るには手を伸ばせばよく、ご飯を食べるには口を開ければいい、という状況です。2人のおじいさん、2人のおばあさんが1人の孫を甘やかしているのです。そこで私たちの保育園も、日本の保育園のいいところを取り入れています。

 幼少期の子どもは、大木の根っこのようなものです。この根っこがしっかりしていなければ、その木は若死にしてしまう。根っことはつまり道徳教育です。道徳は、子どもにとって学業よりも重要なのです。

 私たちの保育園ではまず、子どもたちの道徳面を育てます。たとえば、ボランティアや環境保護の活動に参加させる。また感情をいかにコントロールするかなどは、だいたい1歳半から教えます。中国の幼稚園は、小さいころから唐詩、算数、ピンイン〔中国語のローマ字による発音表記〕といった多くの知識を教えますが、私たちは異なります。

 保育の基本は人間の基本的な行動規範であり、保育の段階でその根をおろさなければなりません。そこで3歳になる前に、私たちは遊びの中で行動規範やセルフケアの能力を学ばせます。この点は、日本の保育園と同じです。3歳になればしっかりと根を張って、正しいことと間違ったこと、物事の白黒がわかります。それから教育をスタートさせるのです。

 私たちの教育は、日本の保育園よりも充実しています。日本の保育園は基本的に遊びを中心としていますが、私たちの保育園では、遊びの中で本当の教育をする。遊びの中で漢字やピンイン、10以下の数の合成・分解などを教えるのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

アングル:ケネディ暗殺文書「押収」の舞台裏、国家情

ワールド

ウクライナ和平で前進、合意に期限はないとトランプ氏

ビジネス

ステランティス会長、欧州自動車産業の「衰退リスク」
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中