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仏教

他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答え」他者の評価ばかり気になる人に伝えたい仏の教え

2024年5月16日(木)16時20分
松波 龍源(僧侶・思想家)*PRESIDENT Onlineからの転載

【見えにくかったものがテクノロジーで可視化された】

仏教では、「私」という存在は他者があって初めて成り立つと考えます。一滴の水をイメージしてください。空気中に存在しているときは「その一滴の水」として認識されますが、海や川に流れてしまえば、その一滴を特定することができなくなります。

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『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』より

一滴の水が消えたわけではありませんが、周りが同じ水だと、認識されなくなってしまうのです。

これと同じで、「私」も「私ではないもの」に囲まれているがゆえに認識されます。

つまり、自分の存在を確認するには、自分以外の他者に囲まれて、他者からの認知のリフレクション(反射)として確認するしかありません。つまり、他者に承認させたいという欲求は自分を確立したい欲求とほとんどイコールで、真理に則ったことなのです。

ですから、ちょっと突飛なことをして注目を集めようとするのは、不思議なことではありません。とはいえ昨今のSNSを取り巻く状況に多くの人が違和感を抱いているのは、一個人の言動が影響を及ぼす範囲が、テクノロジーによって桁違いに広く・速くなったからでしょう。

おそらく百年前も、発信力を持った人物が承認欲求からくる言動で事件を起こしたケースはあったでしょう。けれどその数は非常に少なかったはずです。

人間の構造は昔から変わらないのに、今その数が圧倒的に増えているのは、これまで見えにくかったものがテクノロジーで可視化された結果といえます。

【SNSでつい「盛ってしまう」のはなぜか】

では次に、なぜ人間の承認欲求がここまで膨らんでしまうのか考えてみましょう。

承認欲求を満たすためには、他者から承認されたことを確認する必要があります。前述の通り、自分の存在は他者を通じてしか認知することができません。

それはそうなのですが、他者からのリフレクションとしての自分を認知したうえで、それを評価し、確立する作業をおこなうのは自分であるべきです。

ところが現代は、一人一人のその作業が圧倒的に足りていません。言うまでもなく、その大きな理由の一つがSNSです。

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