最新記事
健康

「市販薬より効果のある健康食材」現役医師が伝授する風邪の予防法・対処法

2024年3月8日(金)11時13分
名取 宏(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

ハチミツの効果にエビデンスあり

では、咳に使われる「鎮咳薬」はどうでしょうか。そもそも咳は気道から痰を取り除く生理的な反応ですので、むやみやたらに止める必要はありません。

でも、よく眠れないほどひどい場合は咳止めを使ってもいいでしょう。

最近は鎮咳薬が不足していますから、代わりにハチミツを使うという選択肢もあります。

民間療法のように思えますが、実はそこそこエビデンスがあります。有名なところでは、1歳以上の小児の急性咳嗽に対して、プラセボや市販薬と比べてハチミツが有効であるという系統的レビューがあります(※5)。

shutterstock_2315557541.jpg

用量・用法に決まったものはありませんが、目安としては就寝前に2.5mL投与です(※6)。ハチミツは甘いので投与後に歯みがきをしてください。

また1歳未満の乳児に対してはハチミツを与えてはいけません。乳児の腸内細菌は未発達のため、まれにハチミツ中のボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を産生することがあるからです。

※5 Honey for acute cough in children - a systematic review
※6 Honey for treatment of cough in children

風邪に抗菌薬は必要ない

反対に風邪に必要ないのが、抗菌薬(抗生物質)です。

風邪の多くは抗菌薬が効かないウイルスが原因ですし、細菌が起炎菌であっても抗菌薬なしでほぼ治癒するからです。

抗菌薬は必要ないどころか、余計な費用、下痢やアレルギーといった副作用のリスク、抗菌薬が効きにくい薬剤耐性菌が生じやすいという害もあります。

まれに処方された抗菌薬を飲み切らずに残しておいて別の機会に自己判断で飲む方もいますが、意図的に耐性菌を作ろうとしているのでなければ、やめたほうがいいでしょう。

また「私の風邪には抗菌薬が効く」と断言する方もいます。抗菌薬とは無関係にご自身の免疫の力で治ったか、肺炎や副鼻腔炎や扁桃炎といった風邪に似ている他の病気だったと思われます。

それなのに一昔前までは風邪に抗菌薬はよく処方されていましたし、今も「患者さんが希望されるから」と処方する医師がいます。

でも、患者さんが抗菌薬の処方を希望するようになったのは、不要な抗菌薬を処方してきた医師、抗菌薬の必要な病気と風邪を区別できない医師がいたからです。

不要な抗菌薬は処方すべきではありません。

水分がとれれば点滴は不要

同様に、医学的には必ずしも必要のない点滴も行われてきました。

風邪がよくなる点滴は存在しません。通常の点滴に含まれている成分は、大ざっぱに言えば水と砂糖と塩です。

のどの痛みが強かったり、吐き気がしたりして水も飲めないという状態でもなければ、普通に口から水分を摂取すればいいのです。

普通の風邪では水も飲めない状態にはまずならないので、風邪に点滴は不要です。

点滴が終わるまでの数十分間は、医療機関に滞在しなければなりませんが、その間に他の患者さんから別のウイルスをうつされたら本末転倒です。

抗菌薬も点滴も、大昔の医師が行ってきた「患者サービス」の名残に過ぎないと思います。

抗菌薬や点滴の必要がなく、対症療法しかできないのなら、風邪で医療機関に受診する必要があるのか疑問に思われるかもしれません。

実際、風邪であれば自然に治るので受診の必要はありません。ごく軽い症状しかないのに受診するのは、新たな感染症にかかるリスクを考えると得策とはいえません。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中