最新記事
健康

「市販薬より効果のある健康食材」現役医師が伝授する風邪の予防法・対処法

2024年3月8日(金)11時13分
名取 宏(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

総合感冒薬は治癒を早めない

一方、風邪をひいてしまったらどうするのがベストでしょうか。風邪に治療薬はなく、症状を和らげる対症療法しかありません。

風邪の原因となりうるウイルスは200種類以上もあるといわれているため各種に対応するのは困難ですし、自然に治るので対応する必要もありません。

風邪の対症療法にもっともよく使われるのは、風邪薬(総合感冒薬)でしょう。よく「早めの(風邪薬名)」なんて宣伝されていますが、つらい症状をやわらげる効果はあるものの、風邪を予防したり早く治したりする効果はありません。

風邪が自然治癒するまでの間の苦痛を減らすための薬です。

ですから、症状が軽ければ薬を飲まなくてもかまいません。薬には一定の割合で副作用が生じますので、そのリスクに見合っただけの利益があるときに使うべきなのです。

shutterstock_2364567119.jpg

市販薬でも処方薬でも総合感冒薬には、解熱鎮痛剤や抗ヒスタミン剤などの複数の成分が配合されています。

一剤でさまざまな症状への効果が期待できるのは利点ですが、症状によっては必要のない成分まで同時に摂取することになるのが欠点です。

つらい症状に効かせる最小限の薬で済ませるのが臨床医としてはスマートだと考えます。風邪に対して3種類も4種類も薬を処方するのは、あまり好ましくありません。

葛根湯とビタミンCの効果とは

日本では、風邪に対して葛根湯をはじめとした漢方薬もよく使われます。率直に言えばエビデンスは限られていますが、経験的に効果があるとされて処方されているのです。

風邪のひきはじめに葛根湯を飲むと予防効果があるという主張もあり、ランダム化比較試験が行われました(※3)。

風邪の症状発現から48時間以内に医療機関を受診した18~65歳の成人をランダムに、【葛根湯群】と【総合感冒薬(パブロンゴールドA)群】に分け、風邪症状の悪化の程度を比較したところ、葛根湯群において168名中38名(22.6%)、総合感冒薬群において172名中43名(25.0%)で風邪症状の悪化がありました。

葛根湯群においてやや悪化した人数が少ないものの、有意差はありませんでした。

ただし、風邪の予防に葛根湯が効かないと決まったわけではありません。

葛根湯に合った病態、東洋医学でいう体質「証しょう」に合っていない患者さんも研究対象に含んでしまったがゆえに差が出なかったかもしれませんし、風邪の症状発現から48時間以内と時間が経ちすぎだったためかもしれません。

ビタミンCも風邪の治療や予防に効果があると言われています。多くの研究が行われていますが一貫した結果は得られていません。

マラソンランナーやスキーヤーといった短期間に激しい運動をした人に限定すれば予防効果はありそうです(※4)。食事から十分なビタミンCを摂取していれば追加のビタミンCの効果はなくても、摂取不足や消耗でビタミンCが不足している集団に対しては一定の効果があるのかもしません。

※3 Non-superiority of Kakkonto, a Japanese herbal medicine, to a representative multiple cold medicine with respect to anti-aggravation effects on the common cold: a randomized controlled trial
※4 Vitamin C for preventing and treating the common cold

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 9
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中