あなたの家が「底冷えする」のは窓のせい 冬寒い先進国でアルミサッシを使うのは日本だけという事実
地震が発生した際の倒壊リスクも高まる
他国では何が使われているのでしょうか。
一般的には熱伝導率の低い樹脂製や木製のサッシが主流です。アルミは、樹脂製や木製に比べて1200倍もの熱伝導率があります。そのため、冬の寒さや夏の暑さを、直接、室内に通してしまいます。また、冬にはサッシが冷えやすいことで高確率で結露が起こり、カビが発生します。カビを餌とするダニも増殖します。それが、さまざまなアレルギー症状を引き起こすと考えられています。
断熱性能の高い住宅に転居した人に、転居前後の体調変化を聞くアンケートでは、ほぼすべての人が、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、気管支喘息などが改善したと答えています(図表5/近畿大学・岩前篤教授の研究より)。しかも、断熱性能が高ければ高いほど、改善率が高まります。理由のひとつには、このカビやダニの問題があります。
結露が起きるのは、窓ガラスやサッシだけではありません。窓枠の端は、壁の中に取り付けられています。窓やサッシの表面の結露は拭き取ることができますが、壁の中にある窓枠が結露すると「内部結露」となり、拭き取ることができません。
その状態が続くと、柱などが腐ったり、シロアリが増えたりといったことが起こります。そうなると、地震の際に住宅が倒壊するリスクも高まります。窓の性能の低さが、住宅の耐久性にダメージを与えるのです。
先進各国では樹脂サッシがメイン
日本では、窓が結露するのは当たり前と考えられ、ホームセンターなどでは結露対策グッズが大量に販売されています。しかし、住環境のルールが厳しいドイツでは、「人の健康を害する結露が起こるのは誤った設計」という共通認識があり、結露しないのが当たり前です。
もし普通に使っていて結露したりカビが生えたりする窓を取り付けた住宅を販売したり貸し出したら、売ったり貸したりしている側が、裁判に訴えられて負ける可能性があります。それほど、住宅の結露やカビが重大な問題だと捉えられています。
日本でも新築住宅に関しては、この数年で急速に樹脂サッシが普及してきました。2011年の時点では普及率が7%でしたが、22年には26%に増加しています(図表4)。それでもイギリス(76%)やドイツ(64%。ともに16年時点)はもちろん、韓国(80%。11年時点)にも後れを取っています。
中国は30%(2000年時点)ですが、寒冷地ではほぼ普及していると考えられています。また、日本では樹脂サッシを除いた74%にアルミが使われていますが、他の国々(中国を除く)では樹脂以外では木製サッシが多くなっています。
こうした国々では、住宅全体と同様、窓についても性能に関する最低基準が義務づけられています。窓の断熱性能は、熱の伝えやすさを表す「熱貫流率=U値(W/m2・K)」という数値で示され、値が小さいほど高性能になります。ドイツはU値1.3、イギリスは1.8、中国や韓国では、地域にもよりますが、2.5前後を最低基準としています。