あなたの家が「底冷えする」のは窓のせい 冬寒い先進国でアルミサッシを使うのは日本だけという事実
無断熱の住宅が3割を占めている
私たちは、省エネについての常識を、根本から変える必要がありそうです。
過度な「がまんの省エネ」は、健康に悪影響をもたらしています。現在、光熱費の高騰などを受けて、暑さ寒さをがまんして冷暖房を控える人(控えざるをえない人)が増えています。それにより体調を崩したり救急搬送されたりする高齢者の方も増えています。
国際的な基準では、暑さ寒さをがまんして消費エネルギーを減らすことを「省エネ」とは呼びません。そんな苦労をせずとも、より効果的に省エネをする方法があります。それが、バケツに空いた穴をふさぐこと。つまり、住宅の断熱気密性能を高めることです。
日本の住宅の断熱性能は、どのようなものなのでしょうか。図表1は、2019年度時点の既存住宅の断熱性能を表したグラフです。
まず、まったく断熱されていない無断熱の住宅が30%ほどあります。雨風をしのげる程度で、温湿度は外気とあまり変わらないような住宅です。次に、断熱材が少しだけ使われた30年〜40年以上前の基準の「昭和55年基準」「平成4年基準」という住宅が、合わせて60%近くあります。無断熱の住宅と合わせると、日本の約9割の既存住宅がまともに断熱されていないことがわかります。
日本の「最高等級」は世界的には低レベル
最後に、日本の23年現在の省エネ基準に適合している住宅が13%です。
この省エネ基準は「断熱等級4」と呼ばれるグレードで、グラフの中ではもっともよく断熱されています。22年4月までの時点では、断熱等級は低い順から1から4まであり、4が最高等級に位置づけられていました。そのため、断熱等級4の住宅を販売していた工務店やハウスメーカーの中には、「国が定めた最高等級の性能です」と営業する会社もありました。「最高等級」というとすごそうですが、国際的な基準で見ると、そのレベルはまったくすごくありません。
図表2では、日本と他の先進各国との断熱基準の差が示されています。横軸は外気温の寒さの度合い、縦軸は断熱のレベルの度合いです。断熱性能を表す数値をUA値(外皮平均熱貫流率)と言います。UA値は、小さいほど住宅の断熱性能が高くなります。
なお日本の各地域は、国(国土交通省)により8つの気候区分に分けられています。例えば、寒い札幌(2地域)と、東京(6地域)とでは、同じ室温を保つために必要な断熱材の量は違います。そのため同じ基準(断熱等級4)であっても、暖かい地域と寒い地域とでは、求められる断熱のレベルが異なっているのです。重要なことは、北海道を除く日本のほとんどの地域の断熱基準は、他国と比較すると極めて性能が低いということです。