最新記事
ライフスタイル

あなたの家が「底冷えする」のは窓のせい 冬寒い先進国でアルミサッシを使うのは日本だけという事実

2024年2月6日(火)19時26分
高橋真樹(ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師) *PRESIDENT Onlineからの転載

無断熱の住宅が3割を占めている

私たちは、省エネについての常識を、根本から変える必要がありそうです。

過度な「がまんの省エネ」は、健康に悪影響をもたらしています。現在、光熱費の高騰などを受けて、暑さ寒さをがまんして冷暖房を控える人(控えざるをえない人)が増えています。それにより体調を崩したり救急搬送されたりする高齢者の方も増えています。

国際的な基準では、暑さ寒さをがまんして消費エネルギーを減らすことを「省エネ」とは呼びません。そんな苦労をせずとも、より効果的に省エネをする方法があります。それが、バケツに空いた穴をふさぐこと。つまり、住宅の断熱気密性能を高めることです。

日本の住宅の断熱性能は、どのようなものなのでしょうか。図表1は、2019年度時点の既存住宅の断熱性能を表したグラフです。

図表1 既存住宅(5000万戸)の断熱性能の割合

既存住宅(5000万戸)の断熱性能の割合(2019年度)(出所=『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』


まず、まったく断熱されていない無断熱の住宅が30%ほどあります。雨風をしのげる程度で、温湿度は外気とあまり変わらないような住宅です。次に、断熱材が少しだけ使われた30年〜40年以上前の基準の「昭和55年基準」「平成4年基準」という住宅が、合わせて60%近くあります。無断熱の住宅と合わせると、日本の約9割の既存住宅がまともに断熱されていないことがわかります。

日本の「最高等級」は世界的には低レベル

最後に、日本の23年現在の省エネ基準に適合している住宅が13%です。

この省エネ基準は「断熱等級4」と呼ばれるグレードで、グラフの中ではもっともよく断熱されています。22年4月までの時点では、断熱等級は低い順から1から4まであり、4が最高等級に位置づけられていました。そのため、断熱等級4の住宅を販売していた工務店やハウスメーカーの中には、「国が定めた最高等級の性能です」と営業する会社もありました。「最高等級」というとすごそうですが、国際的な基準で見ると、そのレベルはまったくすごくありません。

図表2では、日本と他の先進各国との断熱基準の差が示されています。横軸は外気温の寒さの度合い、縦軸は断熱のレベルの度合いです。断熱性能を表す数値をUA値(外皮平均熱貫流率)と言います。UA値は、小さいほど住宅の断熱性能が高くなります。

図表2 住宅の断熱基準(UA値)の国際比較

住宅の断熱基準(UA値)の国際比較(出所=『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』

なお日本の各地域は、国(国土交通省)により8つの気候区分に分けられています。例えば、寒い札幌(2地域)と、東京(6地域)とでは、同じ室温を保つために必要な断熱材の量は違います。そのため同じ基準(断熱等級4)であっても、暖かい地域と寒い地域とでは、求められる断熱のレベルが異なっているのです。重要なことは、北海道を除く日本のほとんどの地域の断熱基準は、他国と比較すると極めて性能が低いということです。

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランのハメネイ師死亡確認、攻撃の応酬続く トラン

ビジネス

日本の海運各社、ホルムズ通航停止など緊急対応 原油

ワールド

トランプ氏、イランに警告 報復すれば前例のない武力

ワールド

パキスタンがアフガン攻撃継続、カブールに空爆 タリ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 2
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 3
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKIが語った創作と人生の覚悟
  • 4
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 5
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 8
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 9
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 10
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中