最新記事
ヘルス

ステージ4のがんが劇的寛解 ストレスや怖れから解放されると治癒能力が高まる

2023年12月4日(月)19時42分
ケリー・ターナー(がん研究者) *PRESIDENT Onlineからの転載

感情を解放するグループワーク

抑圧された感情を解放するためのテクニックのどれもが、すべての人に効くわけではありません。人はそれぞれ、抑圧された感情を解放する独自の方法を見つけます。

たとえば、瞑想やMBSR、タッピングのクラスに参加したり、枕をパンチしたり、ドラムを叩いたりする人もいます。中には、グループでいると感情を解放しやすいという人もいます。メンタルヘルスの改善のために音楽を介したコミュニティを考案する団体も増えています。

ある研究グループは、そのような音楽療法に測定可能な心理的または生理学的な効果があるかどうかについて調べました。

この研究では、参加者は10週間にわたるドラム演奏のグループコースに週1回参加しました。研究者たちは、ほかの社会的活動に毎週1回参加するけれど音楽には参加していない対照群と比較して、このコースがうつ病、不安、社会的回復力の症状を改善できるかどうかを確認したかったのです(※7)。

驚くべきことに、ドラムを演奏したグループでは、わずか6週間で3つの感情指標すべてにおいて著しい改善が見られましたが、対照群には見られませんでした。さらに、その効果は、ドラム演奏のグループコースが終了したあとも3カ月間持続したのです。

研究をさらに進めるために、研究者らは参加者の唾液のサンプルを分析し、グループのドラム演奏コースが身体的な変化をもたらすかどうかを調べました。参加者のコルチゾールとサイトカイン(炎症を抑える免疫細胞のタンパク質)の値を測定したところ、10週間のグループドラム演奏コースのあと、参加者のストレスと炎症の値が大幅に減少したことを発見しました。

これらは両方とも、免疫システムを強化したい人にとってはいいニュースです。心理的、生理的なメリットに加え、この研究では、ドラム演奏がグループの中でおこなわれたため、社会的サポートという治癒要因も組み込まれています。将来の研究で、参加者がグループではなく、マンツーマンのレッスンでドラムを習った場合に、そのようなポジティブな結果を経験するかどうかを見るのは興味深いでしょう。

ステージ4の盲腸がんサバイバーが気づいたこと

抑圧された感情を、ドラムをはじめさまざまな方法で解放しようと試みてきた劇的寛解者の一人が、シカゴ出身のカーリン・マーレイです。盲腸がんサバイバーのカーリンは、20年以上にわたって心と身体、精神のつながりを研究してきました。

診断されるまでの1年間に、カーリンはつらい離婚を経験し、破産を申請し、重度のパーキンソン病と認知症に苦しむ年老いた母親の世話をするために引っ越さなければなりませんでした。当時22歳と20歳だった2人の子どもたちは、家を出て大学に通っていました。この極めて過酷な1年半のあと、カーリンは2013年にステージ4の盲腸がんと診断されたのです。

カーリンの治療は、腹部の臓器を圧迫していた15ポンド(約7キログラム)の腫瘍を取り除くための緊急手術からはじまりました。カーリンは自然治癒を試してもいいかと聞きましたが、医師はがんが進行しすぎているので、すぐに処置をする必要があると言いました。

カーリンは3カ月で4回の化学療法を受け、その後12時間の腹腔内温熱科学療法(HIPEC)の手術を受けることに同意。さらに、彼女は抑圧された感情を解放することが重要な要因であると気づきましたが、10の劇的寛解の治癒要因をすべて受け入れました。

従来の治療のあとの数年にわたる治療の間、カーリンは多くのエネルギー療法士と一緒に取り組みました。

「私は専門家とともに、がん診断の際についてくる感情の中心に"恥"があることを突き止めました!

この気づきによって、私は自分自身を見つめ直し、どのように自身をケアしていたかを確認することができました。自分自身が後回しになっていて、消耗していたのです。

私はほかの人のために与える人であり、介護者であり、母親であり、神聖な空間を保持する人でした。私はほかの人を世話するように自分自身を愛し、育てることを学ばなければいけなかったのです。私は自分自身に徹底的なセルフケアと自己愛を与え、古いパターンを壊し、子どもを愛するように自分自身を愛さなければなりませんでした」

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、ポーランド軍に対ドローン訓練実施へ

ワールド

コンゴ、エボラ出血熱死者31人に 3年ぶり流行で

ワールド

小泉農相、20日に総裁選出馬会見 午前10時半から

ワールド

南ア中銀、政策金利据え置き 過去の利下げの影響見極
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中