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高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」

2023年10月7日(土)09時47分
高田明和(浜松医科大学名誉教授 医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。

というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです。

それでも、どうしても執着が捨てられないのなら、いっそ自分が属していた世界から完全に離れることです。

いつまでも「尊敬されていたい」とか、「下の人間に優越感を持ちたい」と考えているかぎり、現実とのギャップに打ちのめされるだけ。

だから、そうした苦しい思いをしないですむように、その世界から離れるのです。引退者は引退者として、まったく違った人生を楽しむほうが、きっと心穏やかでいられ、楽しくもあるはずです。

本当に「脳に効くトレーニング」の中身

高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)最近は、認知症を予防するために、パズルや間違い探し、クイズや計算ドリルを解くといった、いわゆる「脳トレーニング(脳トレ)」が流行っています。ただ、これが実際に予防に効果あるかといえば、大いに疑問です。

というのも、脳の一部分を酷使したところで認知症対策にならないことは、すでに医学的に証明されているからです。それは、コンピューターのように優秀で明晰な頭脳を日々鍛えている囲碁や将棋の名人でさえも、認知症になることからも明らかです。

逆に、無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。

それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。

そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。

というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です。

ちなみに、認知症の原因の中でも上位を占めるアルツハイマー病は、脳神経が変性し、脳細胞が萎縮していく病です。

最近になり、アルツハイマー型認知症は薬で進行を遅くすることができるようになりました。でも高額なわりに、遅らせる程度は20~25%のみ。たとえば85歳くらいで始まる認知症が、88歳くらいで始まるようにする効果しか、今のところありません。

しかも、認知症を引き起こす病気は、ほかにいくつもあるわけです。ですから、「アルツハイマー型認知症だけの発症を延ばしたところでリスクは変わらない」とする考え方もあります。

でも、「3年も遅らせることができるなら、朗報だ」と考えることもできます。そのご家族にしてみれば、3年間の介護負担があるかないかの差は大きいからです。

ところで、今、世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)。

アルツハイマー病を発生させる要因が解明されれば、将来はかなりの割合で認知症を抑えることができるでしょう。

高田明和(たかだ・あきかず)

浜松医科大学名誉教授 医学博士
1935年、静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。米国ロズウェルパーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を経て、同大学名誉教授。専門は生理学、血液学、脳科学。また、禅の分野にも造詣が深い。主な著書に『HSPと家族関係 「一人にして!」と叫ぶ心、「一人にしないで!」と叫ぶ心』(廣済堂出版)、『魂をゆさぶる禅の名言』(双葉社)、『自己肯定感をとりもどす!』『敏感すぎて苦しい・HSPがたちまち解決』(ともに三笠書房≪知的生きかた文庫≫)など多数ある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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