最新記事
ヘルス

「鼻ホジホジ」「歯磨きサボリ」するあなた、要注意です! 最新研究で分かった「ヤバい習慣と認知症」の意外な関係

2023年9月29日(金)19時10分
中尾篤典(医師)・毛内 拡(脳神経科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

歯磨きしないと糖尿病リスクが高くなる

目、鼻と来て次は口...ですが、口の中でも歯に絞ってお話をします。

医師の中には耳鼻咽喉科や眼科など特定の臓器や器官を専門とする特殊な医師もいますが、歯科医師はそれらの医師とも違って、医師とは全く別の「歯学部」という独立した課程で教育されます。法律上も医師が「医師法」によって規定された資格である一方、歯科医師は「歯科医師法」によって規定された資格です。

日本では1874(明治7)年に初めて医師資格付与制度ができましたが、そのときには歯科医師と医師は分かれていなかったようです。その後、医師法が制定された際に歯科医師は含まれず、現行のように医師と歯科医師が分かれた状態になっていますが、なぜ医師法に歯科が含まれなかったか、その理由は明らかではないそうです。

私たち医師は、歯の欠損部の修復、金属など人工物の被せ物や詰め物、入れ歯などの治療、歯列矯正といった治療は法的に行うことができません。歯科医師のみができます。こういった知識や技術の特殊性から、分岐していったのではないかと考えられています。

さて、歯の話に入りましょう。突然ですが、糖尿病と歯周病が密接に関係していることを知っている人はどれだけいるでしょうか。

そもそも、歯周病は口内にたまった歯垢が引き起こすものです。歯垢というのは、食べかすの中で増殖した細菌の塊ですが、この歯垢が慢性的な炎症を起こし歯周病の原因となるのです。炎症が起きると、サイトカインという炎症物質が、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを妨げ、糖尿病を引き起こします。

歯周病菌を放置してはいけない

また、糖尿病患者は、口の中が乾燥しやすく、唾液に栄養となる糖が増えるため、歯周病菌が増殖しやすくなります。こうして、糖尿病と歯周病は悪循環のサイクルとなっていくのです。

糖尿病患者は非糖尿病者と比較して、歯周病発症率が2.6倍高いという報告があります(※5)。それとは逆に歯周病の治療をすると血糖値が落ち着くといった報告(※6)もあり、両者は深い関係にあります。しかし、これまでの研究では歯周病菌がどのようにして糖の吸収や分解に異常を引き起こすのかは十分理解されていませんでした。

※5 Nelson RG, et al:Periodontal disease and NIDDM in Pima Indians. Diabetes Care.1990; 13: 836-840.
※6 Engebretson S, Kocher T. Evidence that periodontal treatment improves diabetes outcomes:a systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2013; 40 Suppl 14: S15

最近の研究で、歯周病菌は筋肉の脂肪化を引き起こすことがわかりました(※7)。筋肉内に蓄積する脂肪は筋内脂肪と呼ばれ筋内脂肪は、糖尿病の原因となるインスリンの機能低下を引き起こすのに加え、加齢・運動不足により増加します。

※7 Watanabe K, et al. Porphyromonas gingivalis impairs glucose uptake in skeletal muscle associated with altering gut microbiota. FASEB J. 2021; 35(2): e21171.

研究者たちは、筋肉の脂肪化と歯周病の関係を調べるにあたり、歯周病患者の骨格筋が脂肪化したときに放出される物質と歯周病菌の数を測定しました。結果は、歯周病菌の数が多い人ほど、骨格筋の脂肪化が進んでいることが明らかになりました。歯周病菌は筋肉を霜降り状態にする恐ろしい力を持っていることになります。

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

和平協議「数日内」とパキスタン、イランは米が地上攻

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中