「鼻ホジホジ」「歯磨きサボリ」するあなた、要注意です! 最新研究で分かった「ヤバい習慣と認知症」の意外な関係
歯磨きしないと糖尿病リスクが高くなる
目、鼻と来て次は口...ですが、口の中でも歯に絞ってお話をします。
医師の中には耳鼻咽喉科や眼科など特定の臓器や器官を専門とする特殊な医師もいますが、歯科医師はそれらの医師とも違って、医師とは全く別の「歯学部」という独立した課程で教育されます。法律上も医師が「医師法」によって規定された資格である一方、歯科医師は「歯科医師法」によって規定された資格です。
日本では1874(明治7)年に初めて医師資格付与制度ができましたが、そのときには歯科医師と医師は分かれていなかったようです。その後、医師法が制定された際に歯科医師は含まれず、現行のように医師と歯科医師が分かれた状態になっていますが、なぜ医師法に歯科が含まれなかったか、その理由は明らかではないそうです。
私たち医師は、歯の欠損部の修復、金属など人工物の被せ物や詰め物、入れ歯などの治療、歯列矯正といった治療は法的に行うことができません。歯科医師のみができます。こういった知識や技術の特殊性から、分岐していったのではないかと考えられています。
さて、歯の話に入りましょう。突然ですが、糖尿病と歯周病が密接に関係していることを知っている人はどれだけいるでしょうか。
そもそも、歯周病は口内にたまった歯垢が引き起こすものです。歯垢というのは、食べかすの中で増殖した細菌の塊ですが、この歯垢が慢性的な炎症を起こし歯周病の原因となるのです。炎症が起きると、サイトカインという炎症物質が、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを妨げ、糖尿病を引き起こします。
歯周病菌を放置してはいけない
また、糖尿病患者は、口の中が乾燥しやすく、唾液に栄養となる糖が増えるため、歯周病菌が増殖しやすくなります。こうして、糖尿病と歯周病は悪循環のサイクルとなっていくのです。
糖尿病患者は非糖尿病者と比較して、歯周病発症率が2.6倍高いという報告があります(※5)。それとは逆に歯周病の治療をすると血糖値が落ち着くといった報告(※6)もあり、両者は深い関係にあります。しかし、これまでの研究では歯周病菌がどのようにして糖の吸収や分解に異常を引き起こすのかは十分理解されていませんでした。
※5 Nelson RG, et al:Periodontal disease and NIDDM in Pima Indians. Diabetes Care.1990; 13: 836-840.
※6 Engebretson S, Kocher T. Evidence that periodontal treatment improves diabetes outcomes:a systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol. 2013; 40 Suppl 14: S15
最近の研究で、歯周病菌は筋肉の脂肪化を引き起こすことがわかりました(※7)。筋肉内に蓄積する脂肪は筋内脂肪と呼ばれ筋内脂肪は、糖尿病の原因となるインスリンの機能低下を引き起こすのに加え、加齢・運動不足により増加します。
※7 Watanabe K, et al. Porphyromonas gingivalis impairs glucose uptake in skeletal muscle associated with altering gut microbiota. FASEB J. 2021; 35(2): e21171.
研究者たちは、筋肉の脂肪化と歯周病の関係を調べるにあたり、歯周病患者の骨格筋が脂肪化したときに放出される物質と歯周病菌の数を測定しました。結果は、歯周病菌の数が多い人ほど、骨格筋の脂肪化が進んでいることが明らかになりました。歯周病菌は筋肉を霜降り状態にする恐ろしい力を持っていることになります。