最新記事
ヘルス

「鼻ホジホジ」「歯磨きサボリ」するあなた、要注意です! 最新研究で分かった「ヤバい習慣と認知症」の意外な関係

2023年9月29日(金)19時10分
中尾篤典(医師)・毛内 拡(脳神経科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

鼻をほじると認知症のリスクが高まる!?

子供の頃、鼻をほじっていると、病気になるからやめなさいと注意されることがよくありましたが、最近「鼻から入った細菌が原因でアルツハイマー型認知症になる」という研究結果が発表され、注目を浴びています。

認知症の中で最も多いタイプのアルツハイマー型認知症は、認知症の約半数を占めるといわれ、脳の神経細胞が通常よりも早く減ってしまうことで認知機能が徐々に低下していく病気です。物忘れや時間・場所がわからなくなるなどの症状から始まり、悪化すると暴力や家庭崩壊にもつながりかねません。

アルツハイマー型認知症に感染症が関わっている可能性は以前から指摘されており、患者の脳にヘルペスウイルスが多く見られたとか、いわゆるカビのような真菌感染が見られたとかいう報告はこれまでもありました。

オーストラリアのグリフィス大学の研究チームは、アルツハイマー型認知症の患者の脳には高い確率で肺炎クラミジアが見られるという報告をもとに、肺炎クラミジアをマウスの鼻腔に塗りつけ、この細菌がアルツハイマー型認知症の原因かどうかを調べる実験を行いました(※3)。

※3 Chacko A, et al. Chlamydia pneumoniae can infect the central nervous system via the olfactory and trigeminal nerves and contributes to Alzheimer's disease risk. Sci Rep. 2022; 12(1): 2759.

細菌は、傷ついた鼻粘膜から脳に達する

その結果、鼻腔に付着した肺炎クラミジアは、マウスの「嗅(きゅう)神経」を伝って脳に侵入し、鼻粘膜に感染してから24~72時間以内に脳への感染が起こっていました。しかも、肺炎クラミジアに感染したマウスの脳細胞は、感染症に反応してアミロイドβという成分を放出し脳組織に沈着させ始めたのです。

このアミロイドβはアルツハイマー型認知症の症状に関係が深いと信じられているタンパク質の塊のようなものです。この物質が神経細胞の外側に沈着すると、神経細胞が自殺して壊れ、記憶力や認知力が低下していくといわれています。

この現象は、特に鼻の内部組織が傷ついている場合によりはっきり見られました。つまり、アルツハイマーの原因となる細菌は、傷ついた鼻粘膜から脳に達し、アルツハイマーの原因をつくった、という話なのです。

鼻粘膜につながる嗅神経は、血液脳関門といういわゆる脳と外界とのフィルターを迂回して、直接脳につながっているといわれています。それは脳内に到達しにくい薬を、鼻から投与できるといった利点もある反面、細菌やウイルスが検問にひっかかることなく、脳の中に簡単に入っていけることを示しています。

細菌やウイルスにとって鼻粘膜は「絶好の近道」

新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)感染後、うつ病や頭痛、Brain Fog(頭にモヤがかかったようにぼんやりする症状)といわれる後遺症に悩んでいる患者は数多くいますが、こういった鼻からの経路で脳内にウイルスが入った結果であると考えている研究者もいます(※4)。

※4 Marshall M. COVID and the brain: researchers zero in on how damage occurs. Nature. 2021; 595(7868): 484-485.

しかし、これはあくまで動物実験で、直接鼻をほじることが認知症の原因であると断言はできません。とはいえヒトでも同様のことが起きるであろうことは容易に想像できます。

鼻粘膜は細菌やウイルスにとっては脳に入る絶好の近道なので、鼻をほじったり、無理に鼻毛を抜いたりして鼻腔上皮が傷つくと、こうした病原体の脳への侵入を促進させる可能性は十分にあるでしょう。

まちづくり
川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に──「世界に類を見ない」アリーナシティプロジェクトの魅力
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イランと同盟のシーア派組織、軍事力低下でも攻撃激化

ワールド

中国政府、国有石油大手からの備蓄放出要請を拒否=関

ワールド

イラク、原油生産日量140万バレルで維持=石油相

ビジネス

午前の日経平均は続落、一時1100円超安 中東情勢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 4
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中