「鼻ホジホジ」「歯磨きサボリ」するあなた、要注意です! 最新研究で分かった「ヤバい習慣と認知症」の意外な関係
*写真はイメージです Lapina - shutterstock
日常的な習慣が健康のリスクを高めることがある。岡山大学医学部の中尾篤典教授は「鼻をほじったり、無理に鼻毛を抜いたりすると、アルツハイマー型認知症のリスクを高める恐れがある」という――。
「なぜ鼻づまりが起きるのか」がわかってきた
日本人の約3分の1がもっているといわれる花粉症などのアレルギー性鼻炎は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を呈します。その患者数は現在も増加し続けており、特に鼻づまりは不快で集中力が低下し、睡眠障害の原因となることもあります。
私たち医師が鼻づまりの治療をするときは、鼻粘膜の炎症を取るような、広い範囲をカバーする薬を使うしかありませんが、最近、鼻づまりを引き起こす決定的な原因物質が特定されました。これは画期的なことで、今後アレルギー性鼻炎の治療に対する大きな進歩が期待されます。
いわゆる風邪薬というのは、風邪の症状を抑えるためのものであり、原因となるウイルスに直接作用するものではありません。花粉症も同様です。まず花粉症やウイルス感染症などで鼻粘膜が炎症を起こすと、血管から体液が周囲に漏れ、粘膜が腫れて空気の通り道が狭くなります。
こういう場合には、粘膜の血管を収縮させる薬や抗ヒスタミン薬を処方しますが、これらの薬は基本的には炎症を抑え、粘膜のむくみを取るものであり、鼻づまりの原因物質に直接効いているわけではありません。
これらの薬は心臓に影響したり、眠くなったり男性ならおしっこが出にくくなったりと様々な副作用がありますし、長期間使用すると耐性ができてきて、だんだん効かなくなってきます。
東京大学の研究チームが明らかにしたこと
さて、東京大学の研究チームが、鼻粘膜の血管を刺激する物質は、エイコサジエン酸の代謝産物である15-hydroxy eicosadienoic acid(15―HEDE)と呼ばれる脂質であることを突き止めました(※1 ※2)。
※1 Nakamura T, et al. 8-iso-prostaglandin E 2 induces nasal obstruction via thromboxane receptor in murine model of allergic rhinitis. FASEB J. 2021; 35: e21941.
※2 Miyata K, et al. 15-hydroxy eicosadienoic acid is an exacerbating factor for nasal congestion in mice. The FASEB Journal. 2022; 36(1): e22085.
卵の白身に含まれる物質をマウスに与えると、アレルギー反応が起き、人間のアレルギー性鼻炎と同じ症状が出ます。この鼻腔内を洗って洗浄液に含まれる成分を調べてみると、この15―HEDEが多く含まれることがわかりました。
マウスの血管に蛍光色素を入れて調べると、15―HEDEを投与したマウスでは、蛍光色素が血管の外に漏れ出ていることがわかりました。さらに、15―HEDEの投与後のマウスの行動を観察したところ、呼吸困難を示す症状があり、呼吸回数が減って鼻づまりの悪化が見られたのです。
こうしてわかった鼻づまりの原因物質15―HEDEですが、次にこれをターゲットにした薬剤の開発へと向かっていきます。花粉症で悩む患者さんたちにとってさわやかな春が来る日も近いでしょう。