ほぼ寝たきりだった私が10歳若返ったスゴい健康法...テクノロジーと自然の力を利用する「バイオハック」とは?
I Reversed My Age by a Decade
バイオハック効果で生物学的年齢は33歳だという44歳のグレイ TIM GRAY
<不摂生と慢性疾患でボロボロになった心と体を、「バイオハック」により最適化するまで>
20代の頃は毎日同じ生活だった。起きてシャワーを浴び、コーヒーを2、3杯飲んで車で出勤し、昼食は抜き、水は飲まず、帰って夕飯を食べて寝る。その繰り返しだった。
土曜はかならず泥酔するまで酒を飲んだ。よく眠れないので、体は日中に受けたダメージを修復できなかった。
やがて体が音を上げた。免疫力が異常に低下して前立腺と腎臓に炎症が起き、過敏性腸症候群と診断された。疲労と尿路感染症と膨満感と不眠に悩み、頭はモヤがかかったようにぼんやりした。
体が正常に機能しなくなり、慢性疾患でほぼ寝たきりになった。だが傘も持てないほど体力が落ちた私に、医者は「異常は見られません」と言う。そこで悟った。医者が頼りにならないなら自分でどうにかするしかない、と。
「バイオハック」とは本来、体の内外の環境を最適化して健康をコントロールするライフスタイルを指すが、私の捉え方はもっとシンプル。テクノロジーやサプリメントを使い、祖先の暮らしを参考にして心身の健康とパフォーマンスを最適化するのだ。
興味を抱いたのは、バイオハックの父と呼ばれる起業家デーブ・アスプレイが考案した高脂肪の「完全無欠コーヒー」を知ったのがきっかけだった。私は彼が提唱する「完全無欠ダイエット」について調べ、ポッドキャストを聞いた。一方、慢性疾患を治そうと健康法をいろいろ試した。
祖先の生活に立ち返る
最初は日光浴から始めた。ビタミンDの値が異様に低いのは自宅の照明がLEDで、太陽の光が足りていないせいだと推測したのだ。
睡眠を重視し、疲れを瘉やすノンレム睡眠を計測した。水分補給にもこだわった。合成ホルモンや抗生物質や添加物が混じらず、ミネラルが豊富なろ過水を飲んだ。イギリスの水道水にはそうした残留物が含まれることがあると、一部の研究者は言う。
食事の向き不向きは人それぞれで、私の場合、ビーガンは合わなかった。完全菜食では得られないビタミンを、遺伝子が欲したのだ。
一般に、加工食品は全て避けるのが賢明だろう。有機野菜、牧草だけで育てた牛、天然の魚、蜂蜜を食べていれば間違いない。複数の食材を工業的に配合した「超加工食品」が体に悪いという研究結果は、続々と出ている。
こうした長寿の秘訣を実践するうちに、体は回復した。体温を1日3回測り基礎代謝を調べると、2カ月で体温がぐんと上がり、体力も付いた。