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その野菜・果物ジュース、菓子パンよりカラダに悪いかも!? 医者が「ジュースは消化機能を無視した食品」と警告する理由とは

2023年5月22日(月)19時25分
笹井 恵里子(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

「野菜だけのジュース」でも取りすぎは禁物

フルーツジュースの過剰摂取は、老化物質AGEを生み出して体内に蓄積させること、血糖値急上昇により血管を傷めるという2点から体を老化させる。

それではフルーツジュースではなく、野菜ジュースについてはどうかというと、"野菜ジュースのみ"の大規模な研究報告が見当たらない。山岸教授は「要は、果物でも野菜でもジュースとして取る場合は、適量にとどめること」と言い、「取りすぎは、糖の過剰摂取につながる」と話す。

市販の野菜ジュースを購入する際、パッケージに表示される「糖質量」を確認してほしい。野菜ジュースという名前であっても、野菜に含まれる糖分の量が少なくないはずだ。すると前述したように血糖値急上昇につながり、動脈硬化や糖尿病、肥満リスクを高め、AGEを発生させて老化を促進してしまう。

野菜ジュースは「野菜を食べる代わり」にはならない

だがそれでも自分は野菜不足だから、せめて野菜の栄養素をジュースで摂取したほうがいいと考える人がいるかもしれない。ジュースに含まれる栄養価について望月氏に解説してもらった。

「例えば『野菜一日分使用』と記載しているものは、1日分の野菜が取れるわけではなく、1日分(350g)を使ったということで製造工程で栄養素は減ります。市販の野菜ジュースは加熱処理をしていますので、野菜本来のビタミンや食物繊維を摂取することは難しいでしょう。ですのでパッケージに"1日分のビタミンCがとれる"と記載されている場合は、ほとんどが添加されたものになります。食物繊維も添加すれば摂取することができます。添加によって野菜と同じ栄養価を取ることができるということです。栄養素として野菜不足を補うことはできるかもしれませんが、野菜を食べる代用にはなりません。ジュースでは"噛む"という行為もないので、吸収にも影響が出ると思われます」

野菜ジュースに含まれる栄養素がどの程度体に吸収されるのかは、正確にはわからない。それよりも確かなことは、血糖値が急上昇することや病気のリスクを高めることなのだ。

脅すようなことばかり書いてしまったが、あらゆる食品の中で液状による糖分摂取がもっとも危ないと私は考えている。時間がないから、野菜や果物が嫌いだからという理由であれば、ほんの少量でいいので、食材そのものを食べてほしい。ゆっくり噛んで食べるなら、口から胃、そして腸へとゆっくり体に吸収される。また食物繊維も十分含まれているため、血糖値の急上昇につながりにくく、健康や美容へのたくさんの良い効果が期待できる。

笹井 恵里子(ささい・えりこ)

ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『実録・家で死ぬ 在宅医療の理想と現実』(中公新書ラクレ)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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