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「ストレスのない生活」はむしろ寿命を縮める!? 高熱で身体をいじめるサウナはなぜ「健康的」か

2023年2月6日(月)16時00分
ニクラス・ブレンボー(分子生物学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

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左からバイオスフィア2の温室、タワーのある前居住棟、日周期気圧調整ドーム Shimada, K. Sept. 20, 2010 Arizona, USA CC BY-SA 3.0

温室で樹木を育てられるか

1991年秋、8人の科学者がアリゾナ州オラクルにある巨大で未来的な温室に閉じ籠もった。彼らは2年にわたってバイオスフィア2と呼ばれる温室をメインとする建物群の中で過ごすことになっていた。任務は食料、水、酸素、その他、生活に必要なものを自給自足することだ。

この壮大な実験の目的は、ゼロから完全な生態系を作り出せるかどうかを調べることだった。地球上では、幸運なことに人類はそのような生態系の一部になっていて、生きるために必要な物はすべて自然が提供してくれる。人類が自然を正しく扱えば、自然は今後も長く人類の面倒を見てくれるだろう。しかし、何人かが地球を離れて他の惑星に移住することになったら、その惑星でゼロから新しい生態系を築かなければならない。

ご存知の通り、地球の生態系において最も重要な要素の一つは樹木だ。酸素を供給してくれるだけでなく、無数の生物の棲みかであり、建築資材にもなる。そのため科学者たちは、木を新たな生態系の柱と見なし、バイオスフィア2の中に多くの木を植えた。木は長生きするので、数年くらいは何の問題もないだろう、と彼らは考えた。

風のない場所で育った木は強くならずに枯れる

バイオスフィア2に植えられた木は良いスタートを切った。巨大な温室という恵まれた環境のおかげで急速に成長した。しかし、実験が終わらないうちに、その多くは枯れてしまった。何が足りなかったのだろう。世話や栄養が足りなかったわけではない。むしろ、その逆だった。欠けていたのは、ストレスだったのだ。具体的には風というストレスだ。

風は木にとって手ごわい敵の一つだが、実のところ、必要不可欠なものでもある。絶え間なく吹く風に耐えることで木はたくましく強く育っていく。風がない場所では木は弱くなり、やがて自らの重さを支えられなくなって倒れる。

フリーラジカルと抗酸化物質の話に戻ると、抗酸化作用のあるサプリメントを摂る人はなぜ早く死ぬのだろうか。その理由は、風が吹かないと木が枯れる理由と同じだ。つまり、ストレスが生物を強くしているのだ。

逆境が生物を強くするこの現象は「ホルミシス」と呼ばれる。人間の場合、最も身近な例は運動だ。走ることは健康に良いと誰もが思っているかもしれない。しかし、走っている間に何が起きているかを考えてみよう。心拍数や血圧が急上昇する。一歩走るごとに筋肉と骨は負荷を受けて緊張する。

また、運動にはエネルギーが必要なので、代謝が一気に上がり、フリーラジカルが多く生成される。そう、運動すると体は有害な分子を生成するのだ。しかし長い目で見れば、運動は人をより健康にする。なぜなら、それらの負荷があなたはもっと強くなる必要があるというメッセージとして働くからだ。

皮肉なことに、このプロセスを開始する「メッセンジャー」の一部はフリーラジカルだ。これが意味するのは、運動によって強く健康になるプロセスを抗酸化物質は妨げるということだ。フィットネス・インフルエンサーのセールストークとは裏腹に、抗酸化物質は運動の効果の一部を打ち消すのである。

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