最新記事

年金

老後は公的年金だけで大丈夫 プロが見直しを勧める「60代後半がハマる無駄遣い」とは

2023年2月13日(月)17時50分
大江加代(確定拠出年金アナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

実は医療保険もほとんど必要ない

また、医療保険も同様に見直し対象です。入院や手術などに備える保険も、実はほとんど必要ありません。なぜなら、日本には公的医療保険という社会保険制度があるからです。会社なり個人なりで「健康保険」に加入しているかぎり、医療費の自己負担は収入に応じて1~3割負担に抑えられています。この1~3割の負担も高額になった場合は、「高額療養費制度」という費用の軽減制度により、一定額以上は支払わなくて済むのです。

図表1をご覧ください。これは年齢別の医療費と自己負担額を比較したものです。

図表1 現役時代と退職後の医療費

たとえば、85~89歳の医療費は50~54歳の4.6倍の105.6万円かかっています。ところが、実際に払う自己負担額はわずか8.3万円です。さらに、公的医療保険の保険料は所得に応じて変わるため、収入が減少する高齢期には保険料もかなり安くなります。収入の多い50~54歳にくらべると5分の1になっています。年を取るほど保険料が高くなる民間の医療保険とは真逆のしくみです。

老後は保険より現金が大事!

「でも、入院したときの食事や個室の差額ベッド代は、健康保険が使えないよね?」という人がいます。たしかにそうですが、それは貯蓄があればまかなえます。

たとえば、毎月3000円の医療保険に20年入っていると、総額で72万円の保険料を払い込んでいます。1週間入院して、日額1万円の入院給付が出たとしても、もらえるのは7万円です。その程度なら、保険に入らず72万円貯蓄しておけば払えた金額です。

したがって、退職金や貯蓄などのまとまったお金を確保しておけば、負担の大きい保険は全部解約しても問題ないと思います。

また、保険ではなく預金としてお金を持つメリットは、「何にでも使える」ということ。病気にならなければ、自己実現費や旅行や家のリフォームなどに使ったっていいのです。融通の利く使い方ができるからこそ、老後は「保険」より「現金」が大切なのです。

介護も公的介護保険と貯蓄でまかなう

これは介護費用についても同じ考え方です。最近は、民間の介護保険に入る人も増えているようです。しかし、40歳以上の人はみな公的介護保険に加入しています。

公的介護保険は、65歳以上であれば、介護が必要と認定を受ければ原因を問わず利用できます。40歳以上64歳以下の人も、糖尿病、がん、脳血管疾患など老化を原因とする特定疾病にかかり、常時介護が必要と認定されれば、介護保険の利用が可能です。

介護保険の場合は、要介護度に応じて介護サービス費の利用限度額が決められています。この限度額の範囲内であれば、収入に応じた1~3割の自己負担のみです。

ただし、介護保険は限度額を超える介護サービスを受けることもできますが、その部分は全額自己負担になります。高額介護サービス費という負担軽減制度もありますが、こちらは保険適用部分を軽減するもので、限度額を超えて負担した分は軽減の対象外です。

とはいえ、それを民間の介護保険でカバーするのはおすすめできません。理由は医療保険と同じです。不安だからと加入しても、要介護状態にならなければ保険はおりません。それよりも、保険料分を預金することを考えましょう。そして、高齢者施設などに入居するリスクに備えて、退職金を取り崩さずに持っていればいいのです。

介護費用の基本は「親は親、自分は自分」

もうひとつ。定年前後に気になるのが親の介護です。今は自分が60代、70代になっても親が存命で、親の介護に自分の老後資金を使わざるを得なくなったという人もいます。

しかし、介護費用の大原則は、親の介護は親のお金、自分の介護は自分のお金でまかなうということです。これは、自分と子どもとの関係にもいえることです。親子でお金の話はしづらいと思いますが、定年前後の年齢になったら、親が元気なうちに介護やお金の話をしておいたほうがいいと思います。

「子どもに迷惑をかけたくない」という思いは、みんな一緒です。であれば、その費用は自分たちで用意するべきです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ネトフリ共同CEO、ワーナー株主の支持獲得に自信=

ビジネス

日産、南ア工場を中国・奇瑞汽車に売却へ 額は非開示

ビジネス

ドル一時157円前半に急落、日銀総裁会見後

ワールド

ベトナム共産党、ラム書記長を再任 記者会見へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中