「闘うのをやめるべき」? 慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患、元CNN記者が語る「前向きになる方法」
Long COVID-led Medicine
慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患した経験を持つ元CNN記者のライアン・プライアー A. BLOCH PHOTOGRAPHY
<慢性疲労症候群とコロナ後遺症に罹患した経験を持つ元CNN記者が語る「病者の尊厳」と新しい医療の可能性>
新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから、もうすぐ3年。このウイルスに感染し、回復後も長期にわたって生活に支障を来す諸症状に苦しむ人は世界で1億人超に上ると推測される。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)をはじめ、感染症が引き金となる慢性疾患は以前から知られていた。そこに新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆるコロナ後遺症)が加わったことで、こうした疾患の解明と治療法の開発に向けた研究に拍車がかかりそうだ。
研究の進展を促す大きな要因として注目されているのが「患者中心の医療」、すなわち患者が医療者と対等な立場で協力関係を築き、自身のニーズと価値観に合ったケアを求めていく医療である。
元CNNの記者で、長年ME/CFSに苦しみ、コロナ後遺症も経験したライアン・プライアーは新著『ロング・ホール』(ポスト・ヒル・プレス刊)で、周囲に理解されづらい慢性疾患の患者の苦痛と、「患者中心の医療」が医療現場にもたらす大きな変革について論じている。本誌のメレディス・ウルフ・シザーが話を聞いた。
『ロング・ホール』
ライアン・プライアー[著]
ポスト・ヒル・プレス「刊]
――あなたは10代でなかなか診断がつかない症状に苦しんだ。そういう患者には、医師のどんな言葉が救いになるか。
とても単純な言葉だ。「よく分かります。つらいでしょう」。近代医学の父と言われる医師ウィリアム・オスラーは「患者の訴えに耳を傾ければ、正しい診断ができる」と言っていた。医師は患者の望みを聞こう。なぜ回復したいのか。孫に会うためか、大学院に進むためか。医療の真の目的は、患者が夢を抱くという神聖な能力を取り戻せるようにすることだ。
――患者にできることは?
医師も人間だと理解すること。医師は患者を助けたいと思っているが、彼らもまた現状の医療制度に縛られている。医師を共に治療に取り組む対等なパートナーと見なそう。
オンラインの患者支援組織に参加するのもおすすめだ。患者仲間の助言は大いに役立つ。
医師には何を優先的に治したいか伝えること。最新の研究成果を常にチェックする必要もある。臨床試験に参加し、科学の進歩に貢献しよう。
――あなたは最終的にME/CFSと診断され、その後コロナ後遺症にもなった。この2つは似ている? 違いは?
私の感覚では、ほぼ同じだ。悪魔に神経系を乗っ取られたようだった。活力を失い、死んだ肉の塊のようになった。