「運動部の部活は人格形成に必ず役立つ」はウソ 「運動選手ほど規則を軽視する」衝撃の調査も
学生はどこまでスポーツのルールを順守するか
まず、Bradford Strand(米ノースダコタ州立大学)らが2010年と2018年に発表した、アメリカの大学生アスリートと高校生アスリートを対象にした調査結果を紹介します。ゲームズマンシップ(gamesmanship)という、ルールの範囲内、もしくはルールを破って実践される、試合で勝利するための行動に関する調査です。スポーツと教育を論じる上で示唆に富んだ内容です。
調査の対象となったのは、アメリカの4つの大学に所属する455人(男性283人、女性172人)と、16の公立高校に所属する273人(男性105人、女性142人、ジェンダーを明確にできなかった26人)です。25の質問項目があり、怪我をしている箇所への攻撃、報復死球、威嚇・脅し、得点の積み上げ、審判へのだまし、トラッシュトーク(言葉による攻撃)、派手なパフォーマンス、誤審の黙認、非公開情報の活用などについてどう思うかを問うものとなっています。
大学生の半分以上がトラッシュトークを許容する
図表1に研究結果の一部を紹介します。
トラッシュトーク(例えば、得点者が相手ディフェンダーに「お前はへぼだ」などと言う)について尋ねた項目では、大学生アスリートの半分以上が、高校生アスリートでも約5人に1人が許容するという結果になっています。また、ブーイングややじであれば許容されることにイエスと回答した大学生は約3人に1人という結果になりました。
これほどまでの学生・生徒がトラッシュトークややじを許容する背景には、彼らが目標とするプロスポーツ選手たちがトラッシュトークを試合で日常的に用いていることが影響していると考えられます。
ノースカロライナ大学のスターであった、バスケットボールの神様であるマイケル・ジョーダンは、激しい闘争心から有名なトラッシュトーカーでした。また、世界中で大きく報じられた2006年サッカーワールドカップ決勝でのジダンによる頭突きは、対戦チームの選手との間でのトラッシュトークが引き鉄となりました。
ベンチにいるプレイヤーが対戦チームをあざけり、やじることはアメリカのみならず日本においても行われています。運動部活動だけでなく、少年野球などにおいても行われてきたことは多くの人が知るところです。
バスケットボールやサッカーのみならず、どのようなスポーツにおいても通常は、選手が対戦相手を侮辱・攻撃する発言は競技規則で禁止されています。明確にルールで禁止されているにもかかわらず、他者を傷付ける行為を許容する態度は、決して社会性が養われているとは言い難いでしょう。