最新記事

教育

勉強する子もしない子も「スマホを触るとバカになる」は本当 7万人調査で判明「スマホと学力」の関係

2022年12月20日(火)16時30分
川島隆太(東北大学加齢医学研究所 所長/脳科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

スマホの使用時間が長いほど子どもの学力が低下するという *写真はイメージ real444 - iStockphoto


スマホは子どもたちにどんな影響を与えているのか。東北大学の川島隆太教授は「7万人以上の追跡調査の結果、スマホの使用時間が長いほど学力低下の程度が大きいことがわかった。スマホの悪影響は無視できない」という。川島教授の著書『オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題』(アスコム)からお届けする――。


30年以上前から指摘されたパソコンの悪影響

いつも身近で使えるスマホですから、長時間使う人が多く、使いすぎれば人に悪影響を及ぼす、とずっと前からいわれてきました。

じつはスマホが登場する十数年前から、パソコンは有害なのではないか、といわれ出しています。最初に話題になったのは、アメリカで大学生がパソコンで調べものをし、宿題をしたりレポートを書いたりしはじめた以降です。

パソコンで何らかの作業に集中しているとき、別の情報が割り込んで入ってくると、そちらに気が向いて、その処理をしてしまう。もともとの作業が途切れ、注意力が続かなくなる。このことがいろいろな悪さを引き起こすのではないか、という観察研究がスタートしたわけです。

1980年代半ばから90年代にかけてのオンラインは、アメリカのAOL、日本のニフティなど、専用回線を介してチャット・メール・掲示板・ホームページ閲覧などをする会員制サービスでした。いわゆるパソコン通信です。

95年には、インターネットへの接続を標準機能として備えたWindows95というOS(基本的なオペレーション・ソフト)が登場して、インターネットの普及が進んでいきます。

子どもがスマホを長時間使う危険性を、誰も知らなかった

2004年にフェイスブック(Facebook)、06年にツイッター(Twitter)が出てきてSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)が始まると、パソコンの作業に割り込んでくるものの魅力が格段に増大しました。

そこに、通信回線が光ファイバーにどんどん置き換わる、猫も杓子もホームページを開設する、ゲームがますますおもしろくなる、スマホが出てくる(発売は07~08年から、本格的な普及は10年から)、11年にはLINEも登場する、というように、オンラインの世界が一気に巨大化していったのです。

すると、「はっきり、おかしなことが起こっている」という証拠が次から次へと出てきました。ある一群の人たちの学力が低下している、文章の理解力が低下している、うつ状態になる人たちが少なからず出始めた──などです。

それでも、パソコンやスマホの使用につきまとう避けられないリスクを知る人は、研究者や意識の高い人など、ごく少数に限られていました。

仕事でパソコンと長く向き合う人は、目がしょぼしょぼしてぼやけてくるわ、指が痛くなるわ、手首が重くなるわ、肩が凝るわと実体験していますから、注意して休息を入れ、遠くを見たり軽い体操をしたりします。仕事なのだから、身体への負担はある程度やむをえない、とも思っているでしょう。

ところが、そんな自覚がない子どもたちは、思うがままにスマホやゲームに浸かりきってしまいます。子どもがスマホを長時間使う危険性、学力や理解力を低下させてしまう悪影響を考える人は、保護者を含めて当初はほとんどいませんでした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

JPモルガン、FRB利下げ予想12月に前倒し

ワールド

ニュージーランド、中銀の新会長にフィンレイ副会長を

ビジネス

中国の安踏体育、プーマ買収検討 アシックスなども関

ワールド

韓国中銀、政策金利据え置き 緩和終了の可能性示唆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中