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公園の池の水抜く「かいぼりしたら死の池に」 魚が消え、鳥まで来なくなった......

2022年12月15日(木)11時32分
石浦章一(東京大学名誉教授) *東洋経済オンラインからの転載

かいぼりできれいになった池には生き物の姿がなくなっていた── *写真はイメージです Bespalyi - iStockphoto


私たちの生活を便利にしてくれる科学技術。その進歩とともに、身近なところで「ワクチンは打ったほうがいいのか? 打たないほうがいいのか?」などと今までにない判断を迫られることも増えてきている。
そのような現状をふまえ、エセ科学に踊らされないための科学リテラシー(科学的な知識を社会のためにどう上手に使えばいいのかを考える能力)がますます重要になってきていると強調するのは、東京大学名誉教授の石浦章一さん。『日本人はなぜ科学より感情で動くのか』を刊行した石浦さんに、科学リテラシーを身につけるコツについて話を聞いた。

透き通ったきれいな池にしたら起きたこと

私が住んでいる近くの公園では、「かいぼり」といって市民ボランティアが池の水を抜いて、透き通ったきれいな水にしましょうという運動をやっています。そのとき、池の中から自転車が200台以上見つかりました。

とんでもない話で、夜にそーっと来て池の中に要らない自転車を捨てている人がこんなにたくさんいたということがわかり、かいぼりというのは非常にいいことなんだと、多くの人は思ったようです。

結論としては、かいぼりをしたところ、濁った水がなくなって池の底まで見通せるようなきれいな池になったのです。100%素晴らしいと思うでしょう。外来種がいなくなり、大型のコイもすべて駆除されて、底まで透き通ったきれいな池になったのですが、何が起こったかというと、かいぼりをしてから数年、魚がいなくなり鳥も来なくなってしまいました。死の池になってしまったのです。

なぜ外来種はいけないのか?

以前は、いろんな鳥が来ていて、いろいろな魚がいて非常に楽しい池だったのですが、今はほとんど何もいない池になってしまいました。数年たって、鳥は少し回復してきましたが昔ほどではありません。代わりに、外来種の藻が急激に増えて池全体を覆うことも多くなりました。これで本当に良かったのでしょうか。

いろいろな生物がいるのが地球であり、外来種がなぜ悪いのでしょうか。このような疑問をもち、立ち止まって考えてみることが、科学リテラシーを身につけるうえでとても大切になります。

今の日本の外来生物法では、「外来生物」は「海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地または生育地の外に存することとなる生物」と定義されています。

「外来生物」とほぼ同じ意味で使われる「外来種」には、人為的に放流された国内の魚なども含まれます。例えばワカサギは、食べるとおいしい魚だということもあり、たくさんの湖に放流されました。だから、今となっては喜ばれているワカサギだって、場所によっては外来種で昔は駆除の対象でした。

しかし現在の生態系は、外来種の存在も含めてできているわけです。つまり、在来種か外来種かのいかんにかかわらず、現在の環境には、一番そこに適応している生物がいるということです。

いわば皆さんは生物の進化の途中を見ているわけです。だから外来種を除けというのは、単に昔が良かったという話でしかなく、外来種を駆除することは意味のない話ではないか、という考えも当然あるわけです。

つまり、外来種に生存を脅かされている在来種を保護し、生物多様性を保つことは本当に必要ですか、ということです。

生物多様性重視はアメリカの経済政策の一環だった

生物多様性が必要という考えが出てくるということは、実際に生物多様性が私たちにサービスをしているということを示しています。実は、生物多様性というのは、もともとはアメリカが経済政策の一環として言い出したことでした。すなわち、生物多様性を保つというのは、生物資源に価値を見いだして金儲けに走ることがなきにしもあらずだったのです。

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