最新記事

教育

親が子どもの自己肯定感を下げてしまう「5つの言葉」 成績悪化につながることも

2022年10月2日(日)11時11分
石田勝紀(教育デザインラボ代表理事、教育評論家) *東洋経済オンラインからの転載

正しい意図が伝わらない

例えば、親が「だからこういうときは〇〇するの!」と言ったとします。親は教えているつもりでしょうが、これは客観的に見ると「怒っている」と言います。これでは内容は子どもに伝わらず、親の感情だけが子どもに残ります。つまり、子ども側からすれば、親に怒られたことだけが印象に残り、改善ができず、何回も言われなければならない事態になるということです。

この現象は先生が生徒を怒っている場面でも見られます。子どもの頃、先生が授業中に怒る場面に遭遇したことがあると思いますが、そのときの内容を覚えていますか。おそらく覚えているのは、先生が怒っていたという感情面だけでしょう。

「何回言ったらわかるの!」という言葉が意味するところは、「何回も言わないとわからないあなたはまったくダメね! どうしようもないね!」であり、これで自己肯定感が下がらないほうが珍しいといえます。

(5)早くして!

この言葉は意外と思うかもしれません。毎日のように子どもに言う言葉でドキッとする人もいるかもしれません。

時間感覚は生きてきた年数が異なる大人と子どもでは違うと言われています。ジャネーの法則では「年齢比の逆比」と言われており、例えば10歳の子と40歳の親では、年齢比は1:4なので、時間の長さの感覚は4:1になるということです。ですから、「たった10分なんだからやってしまいなさい」と親が発言する10分は、その子にとっては40分の感覚ということです。

また、一部の例外を除き、一定年齢までの子どもには未来という概念がありません。もし未来の概念があれば、不安感を抱き、準備を始めるということをするはずですが、子どもの多くは目の前の現実のみを見て判断する傾向にあります。

裏メッセージが心に深く埋め込まれる

ですから、早くさせたいのであれば、間に合うような仕組みを考えるほうがいいのですが、つい声かけだけで何とかしようと思い「早くしなさい」と言ってしまうわけです。

「早くしなさい」「早くして!」と言われ続けた子どもはどうなるでしょうか。一つはその言葉をアラームとして認識することになります。つまり親が言わないと動かないということです。

もう一つは、「早くして」という言葉から「あなたは遅い」というメッセージだと受け取ります。「遅い=ダメ人間」と自己肯定感を失わせることもあります。

以上の5つの言葉を紹介しました。こうした日常の何気ない言葉には、「裏メッセージ」があり、その裏メッセージが心にアンカーとして深く埋め込まれることがあるので、注意を要します。

ただし、これらの言葉は絶対に使用してはいけない言葉ではなく、1回、2回使う程度はまったく影響ありません。問題となるのは、継続的に使われた場合です。ぜひ日常の振り返りとしてこの5つを検証してみてください。

石田勝紀

教育デザインラボ代表理事、教育評論家
1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。 講演、執筆相談はこちらから。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも

ビジネス

米バークシャー、アルファベット株43億ドル取得 ア

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 8
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 9
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 10
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中