最新記事

保険

収入の1割以上、毎月約10万円が保険料に...... なぜ「国民健康保険」は高額なのか

2022年8月19日(金)20時20分
笹井恵里子(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

無職、年金加入者、非正規雇用が多く集まる保険

国保は加入者の平均年齢が高いこと、それに加えて「所得の低い人」が多く加入していることが、結果的に保険料を押し上げている。かつては加入者の7割が自営業者と農林水産業者だったが、次第にその割合が減少し、現在は国保加入者で「所得なし」の割合が約3割、所得100万円未満が半数を占める。

当然ながら、所得に応じた保険料(所得割)だけでは医療費をカバーできない。

「ですから国保には世帯人数に比例して保険料が高くなる『均等割』、国保に加入する全世帯が平等に負担する『平等割』があるのです」(寺内氏)

特に均等割は、家族が多いほど、子どもが多いほど損な制度だ。例えば世帯主の夫がいて、妻、子どもがいれば、3人分の均等割が発生してしまうのである。住まいの地域によって金額に多少の差はあるが、例えば大阪府大阪市在住で現役40代夫婦と未成年の子ども2人(小・中学生)の4人世帯で世帯所得が300万円の場合、国保料は年間58万円と試算されている。所得の19%だ。国保加入者以外の人は、自身の所得の19%が健康保険料としてもっていかれることを想像してほしい。

「国保は今や無職の人、年金加入者、非正規雇用の人々が多く集まる保険になりました。所得が低い人たちで、かつ年齢が高くて病気を発症するリスクが高い、つまり医療費がかかる集まり。このメンバーでがんばりなさいといわれても......加入者にとって過重な国保料です」(長友氏)

まるまる一冊分の原稿料が国保料に消えていく

都内に住む私は、国民健康保険を扱う近くの窓口をたずねた。国民健康保険の決定通知書を見せ、今年も現状維持の収入となりそうだが、この状態で減額の措置はあるかとたずねると、区の職員は首を横にふる。

「ありません。通常、国保料の減免は直近3カ月の収入や家賃の金額などトータルで判定しますが、生活保護を受けられるかどうかというほど困窮している世帯が対象になります。コロナ禍でも前年より30%の収入が減っていることになれば、減免措置が受けられますが......」

私は納得がいかなかった。毎年一冊、本を出版しているが、そのまるまる一冊分の原稿料が国保料に消えていくのだ。その思いを伝えると区の職員は同情をこめてうなずく。

「以前は住民税と同じようにお支払いになった生命保険などを差し引き、ひとり親控除なども行った所得に対し、国保料を算定していました。しかしそうなると、ご家族の多い方が優位になってしまうという考えから、現在は"基礎控除のみを行った所得"で国保料を計算しています」

「もう国保の制度が破綻しているんです」

厚生労働省はコロナの感染拡大による受診控えが影響し、国民健康保険の2020年度の財政状況が2054億円の黒字だと発表した。全体の医療費は大きく減ったはずである。それなら保険料の減額につながらないのだろうか? これも申し訳なさそうに区の職員が首を横にふる。

「国保は保険料だけでは運営できませんから一般会計からも補塡(ほてん)しています。これはいってみれば、企業にお勤めの被用者保険に入っている方の住民税をもらっているようなものです。公平性を考えたら国保は国保の中だけで解決しなければなりません。ですから医療費が減ったからといってすぐ保険料を下げるというわけにはいかず......」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

レバノン人道危機が深刻化、子ども84人死亡・66万

ワールド

G7エネ相、石油備蓄放出含め措置講じること確認=赤

ワールド

ホルムズ海峡「平和か苦難」いずれかに、イラン安保ト

ビジネス

イラン戦争でも金利変更急ぐべきではない、複数のEC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目のやり場に困る」密着ウェア姿がネットを席巻
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 6
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中