最新記事
教育

親の学歴・年収より影響が大きい!? 「子供の学力が上がった家庭」にたくさん置いてるあるものとは

2022年7月17日(日)11時00分
榎本博明(心理学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

具体的には、「子どもと一緒に美術館や劇場に行く」「子どもと一緒に博物館や科学館に行く」「子どもと一緒に図書館に行く」といった行動を親が取っている家庭ほど、子どもの学力が高いことがわかったのです。

このような関連は、他の調査研究でも示されています。

そうしたデータからは、小さい頃から親に連れられて図書館に通うことで、子どもたちは書物に親しみ、また美術館、博物館、科学館などの文化施設に出かけることで、子どもたちは知的好奇心を刺激され、そうした経験の積み重ねが、その後の言語能力の発達や学習意欲につながっていることが読み取れます。

徐々に増えてきた子供の読書数

全国学校図書館協議会が毎年実施している学校読書調査というものがありますが、2021年に実施された第66回学校読書調査の結果をもとに、小学生(4~6年生)の読書傾向についてみてみましょう。

その調査は、毎年6月に行われますが、回答の正確さを期すために、記憶に新しい5月の読書傾向について答えるようになっています。集計結果をみると、2021年の小学生は、5月1カ月の間に平均12.7冊の本を読んでいました。これはかなり多いと言ってよいのではないでしょうか。

過去のデータと比べてみると、2005年までは6~8冊の間を推移していましたが、2006年に9.7冊と急増し、ここ10年ほどはおよそ10~12冊となっています。

それには、学校教育関係者の動きが影響していると思われます。子どもたちが本を読まなくなっていることが教育界で深刻な問題と受け止められるようになり、2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布され、翌2002年に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定されました。

それを機に、学校では子どもたちの読書を推進するために、さまざまな工夫がなされるようになったのです。2006年頃から小学生の読書冊数が増えてきたのは、そうした教育者たちの努力の成果と言ってよいでしょう。

読書週間が身につくかどうかは家庭環境が大きく影響する

ただし、いくら学校側が読書を推進するための方策を試みても、本を読まない子がいなくなるわけではありません。2021年の不読率は5.5%となっています。不読率というのは、1冊も本を読まない子どもの比率です。

榎本博明『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』不読率は、2002年に10%を割り、2005年に5.9%になって以来、ほぼ同じような水準で推移しています。これは比率としては低いものの、全国の小学生の数からして、その実数はかなりのものになります。

そこで思い返してほしいのは、読書習慣が身につくかどうかには、幼い頃からの親の読み聞かせや家庭の蔵書数、親の読書姿勢などの家庭環境が影響するということです。いくら学校が読書を推進するような工夫をしても効果がない場合は、家庭環境による支援が必要ということかもしれません。

また、家庭環境が読書を促進するものであれば、学校環境との相乗効果が見込めます。

榎本博明(えのもと・ ひろあき)

心理学博士
МP人間科学研究所代表。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)『50歳からのむなしさの心理学』(朝日新書)『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)など著書多数。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

NYタイムズ、パープレキシティAIを提訴 無断複製

ワールド

プーチン氏、インドに燃料安定供給を確約 モディ首相

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、12月速報値は改善 物価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中