親の学歴・年収より影響が大きい!? 「子供の学力が上がった家庭」にたくさん置いてるあるものとは
具体的には、「子どもと一緒に美術館や劇場に行く」「子どもと一緒に博物館や科学館に行く」「子どもと一緒に図書館に行く」といった行動を親が取っている家庭ほど、子どもの学力が高いことがわかったのです。
このような関連は、他の調査研究でも示されています。
そうしたデータからは、小さい頃から親に連れられて図書館に通うことで、子どもたちは書物に親しみ、また美術館、博物館、科学館などの文化施設に出かけることで、子どもたちは知的好奇心を刺激され、そうした経験の積み重ねが、その後の言語能力の発達や学習意欲につながっていることが読み取れます。
徐々に増えてきた子供の読書数
全国学校図書館協議会が毎年実施している学校読書調査というものがありますが、2021年に実施された第66回学校読書調査の結果をもとに、小学生(4~6年生)の読書傾向についてみてみましょう。
その調査は、毎年6月に行われますが、回答の正確さを期すために、記憶に新しい5月の読書傾向について答えるようになっています。集計結果をみると、2021年の小学生は、5月1カ月の間に平均12.7冊の本を読んでいました。これはかなり多いと言ってよいのではないでしょうか。
過去のデータと比べてみると、2005年までは6~8冊の間を推移していましたが、2006年に9.7冊と急増し、ここ10年ほどはおよそ10~12冊となっています。
それには、学校教育関係者の動きが影響していると思われます。子どもたちが本を読まなくなっていることが教育界で深刻な問題と受け止められるようになり、2001年に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布され、翌2002年に「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が策定されました。
それを機に、学校では子どもたちの読書を推進するために、さまざまな工夫がなされるようになったのです。2006年頃から小学生の読書冊数が増えてきたのは、そうした教育者たちの努力の成果と言ってよいでしょう。
読書週間が身につくかどうかは家庭環境が大きく影響する
ただし、いくら学校側が読書を推進するための方策を試みても、本を読まない子がいなくなるわけではありません。2021年の不読率は5.5%となっています。不読率というのは、1冊も本を読まない子どもの比率です。
不読率は、2002年に10%を割り、2005年に5.9%になって以来、ほぼ同じような水準で推移しています。これは比率としては低いものの、全国の小学生の数からして、その実数はかなりのものになります。
そこで思い返してほしいのは、読書習慣が身につくかどうかには、幼い頃からの親の読み聞かせや家庭の蔵書数、親の読書姿勢などの家庭環境が影響するということです。いくら学校が読書を推進するような工夫をしても効果がない場合は、家庭環境による支援が必要ということかもしれません。
また、家庭環境が読書を促進するものであれば、学校環境との相乗効果が見込めます。
榎本博明(えのもと・ ひろあき)
心理学博士
МP人間科学研究所代表。1955年、東京都生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。『〈ほんとうの自分〉のつくり方』(講談社現代新書)『50歳からのむなしさの心理学』(朝日新書)『ほめると子どもはダメになる』(新潮新書)など著書多数。