最新記事
教育

親の学歴・年収より影響が大きい!? 「子供の学力が上がった家庭」にたくさん置いてるあるものとは

2022年7月17日(日)11時00分
榎本博明(心理学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載
読書する子供たち

文部科学省の調査によると蔵書数の多い家庭ほど子供の学力は高いという。 ※写真はイメージです LeManna - iStockphoto


子供の学力を上げるためにはどうすればいいのか。心理学博士の榎本博明さんは「文部科学省の調査によると、蔵書数の多い家庭ほど子供の学力は高い。子供の学力は親の年収や学歴が影響していると思われがちだが、研究によると読書習慣や博物館などの文化施設に連れて行くことのほうが重要なようだ」という――。

※本稿は、榎本博明『親が「これ」をするだけで、子どもの学力は上がる!』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

遺伝的な要因だけで決まるわけではない

子どもが親に似ていると、「やっぱり血は争えない」などといって遺伝のせいにしがちです。学力についても、わが子の成績が悪いと、「私の血をひいているんだから仕方ない」などと自嘲気味に言う人もいます。

でも、よく考えてみてください。子どもが親に似るのは、すべて遺伝の力によるものなのでしょうか。

たとえば、日本語を話す家庭に生まれ育てば日本語を話すようになり、英語を話す家庭に生まれ育てば英語を話すようになります。日本人の遺伝子をもっていても、英語圏の英語を話す家庭に生まれ育てば、当然ながら英語を話すようになります。このように、どんな言語を話すようになるかは、遺伝によって決まるのではなく、環境によって決まります。親が話す言葉が環境要因となって、子どもが話す言葉を規定していくのです。

親がいつも本を読んでいる家庭で育つ子が本をよく読む子になり、親がほとんど本を読むことのない家庭で育つ子が本を読まない子になったとしても、それは親の行動を日常的に見ているためであり、親の行動が環境要因となって子どもの読書姿勢を規定していると言ってよいでしょう。

このような事例をみれば、子どもが親に似ているからといって、それは必ずしも遺伝の力によるものではないということがわかるでしょう。

遺伝だけではなく環境要因の影響も大きい

言語能力については、世代間伝達ということがよく言われますが、その場合も家庭という環境要因の影響を見逃してはなりません。

心理学者の猪原敬介は、言語能力の発達に関する諸研究を踏まえて、早期の言語能力が高いほど、その後も言語能力を伸ばしていける傾向があり、その早期の言語能力を規定する重要な要因は、養育者から子どもに伝達される有形無形の資本であると言います。

そして、養育者から子どもに伝達される有形無形の資本として、知能、家庭教育、親の社会経済的地位、親の学歴などをあげています。この中の知能、親の社会経済的地位、親の学歴などは遺伝要因とみなされがちですが、じつは、そこには遺伝要因と環境要因が絡み合っているのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米アップル、エピックとの独禁法訴訟で命令の一部撤回

ビジネス

午後3時のドルは155円後半で売買交錯、来週のイベ

ワールド

暗号資産テラUSD開発者に禁固15年、暴落で巨額損

ワールド

インド、中国人専門職のビザ審査迅速化 関係改善へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中