最新記事

自己啓発

アンガーマネジメント、6秒我慢しても逆効果 自衛隊メンタル教官直伝「怒りを一瞬で消す方法」とは

2022年6月14日(火)20時00分
下園壮太(心理カウンセラー) *PRESIDENT Onlineからの転載

このような現実を知らないでいると、「お寺で教えてもらった通りにできない私はダメだ」「お坊さんのように、感謝できない僕はダメだ」などと、やみくもに自己嫌悪に陥ってしまうことになります。

何をしてもしなくても怒りを買ってしまう現代日本社会

アンガーマネジメントや宗教・倫理教育などの利点と欠点(限界)について解説してきました。ここで強調してきたのは、感情のメカニズムと、それに応じた上手な対応をしないと、外的・内的エスカレーションを引き起こし、逆にイライラしやすい体質になってしまうということです。

『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』では、より効果的、かつ実行可能な「個人の対処法」を提案していくのですが、その前にもう1つだけ、確認しておかなければならないことがあります。これまでは、人間や感情の根源的な部分からの考察を進めてきましたが、私たち現代人の怒りについては、まだ十分に触れていないのです。現代人の怒りの強度や成り立ちをきちんと把握しないと正しい対処方針や攻めどころ(努力の向けどころ)を見つけることはできません。

最近、どうも日本人が不寛容、つまりイライラしているような気がします。他者の少しのミスを許せない。ネットでは、それぞれが軽い気持ちで吐き出した怒りが、数の力でうねりとなり、対象になった人を社会からだけではなく、本当に抹殺しかねない状態です。

路上での煽り運転などの増加も目立ちます。一方で、お笑いなどの「いじり」、タレントや政治家などの本人的には他意のない発言などにも、いわゆる「失言」として強い拒否感を持つ方も増えてきました。何をしてもしなくても、誰かの怒りに触れてしまいそう......。そんな時代のように思えます。

私は、この不寛容のトレンドは、文明化の一過程だと思っています。物質文明が豊かになり、他者と協力しないでも、一人で生きていけるようになりつつある。一人で気ままのほうが楽ですから、どうしても、他者と交わる場面における耐性が育ちにくいのです。

「多様性」を認める社会が怒りを生む理由

『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』さらに、昨今は「多様性」を強調するようになりました。これは文化的には前進だと思いますが、常に原始人を基準にものを考える私には、少し違う側面が見えます。

原始人は、異質を嫌います。攻撃される危険が高まるからです。多様性を認めるということは、自分の周囲にどうしても異質な人が増える。理性では「当然良いこと、あるべき変化」と認識できる多様化に対し、心の奥底で警戒心を高めてしまう部分がある。それが人間です。

多様化が進む段階で、人は知らず知らず不寛容に傾いているのだと思うのです。

ただ、人には「慣れる」という機能があります。無意識が感じる多様化への抵抗も、10年単位でゆるんでいくと楽観はしています。

下園壮太

心理カウンセラー
1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の「心理幹部」として多くのカウンセリングを手がける。著書に『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)など多数。
Twitter


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中