最新記事

自己啓発

相手を変えるにはまず自らを変えよ ── そんな助言を禅僧がキッパリ否定するのはなぜか

2022年4月25日(月)19時00分
南 直哉(禅僧) *PRESIDENT Onlineからの転載

関係がいわゆるパワハラのレベルにまで悪化しているなら話は別です。対処の方法も個人のテクニックだけでなんとかできるものではありません。しかし、問題が「好き嫌い」にとどまる内は、それなりの動かしようがあるものです。

問題は自分の中ではなく、人との「間」にある

「あきらめる」は、漢字では「諦」と書きます。

「諦」は、「悟る」ことと同じ意味です。ふだん使う「断念する」意味でなく、「つまびらかに見る」「明らかに見る」、仏の智慧を表します。

明らかに見るときに一番大事なのは、「苦しい」「つらい」という感情を抜きにして、事態を正確に判断できるか。そして、問題は自分の中ではなく、人との「間(ま)」にあると気づけるかです。人が直面する問題のほとんどが、人との「間」に存在します。「私の問題」とは、他人と一緒に織った織物のようなものなのです。

その証拠に、この世に自分ひとりだったとしたら悩むことはないでしょう。

他人がいて、自分がいる。その間にはストーリーが生まれ、人は喜怒哀楽を感じます。そしてそこに執着し、いつまでも反芻(はんすう)し続けます。

しかし、そのストーリーとは、自分自身の「記憶」にすぎません。

『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』自分のつくった物語だけを見て苦しい感情にどっぷりつかる前に、問題を解決するには、他人との関係を組み替えることだと見極める必要があります。

「関係を組み替える」と言うとき、試してみる価値があるのは、人間関係の根底にある力関係と利害関係をよく見て、そのバランスを変えてみることです。

やり方のひとつは、「少し相手に譲ってみる」こと(無理して大きく譲るのは逆効果です。バランスが「崩れて」しまうから)。

もうひとつは、新たに第三者を引き込んでみること(あらかじめ十分に問題を理解してもらわなければいけません)。これらの工夫が引き起こす変化を効果的に取り込んで、問題の解決に活かしてみてはどうでしょう。

この種の見極めができるかどうか。これが、今自分が問題だと思っている状況から抜け出すための大前提です。

南 直哉(みなみ・じきさい)

禅僧
1958年、長野県生まれ。青森県恐山菩提寺院代(住職代理)、福井県霊泉寺住職。早稲田大学第一文学部卒業後、大手百貨店勤務を経て、1984年に曹洞宗で出家得度。同年から曹洞宗・永平寺で約20年の修行生活をおくる。著書に『恐山 死者のいる場所』、『超越と実存 「無常」をめぐる仏教史』(いずれも新潮社)、『善の根拠』『仏教入門』(講談社)、『死ぬ練習』(宝島社)など多数。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EU、ロシア産ガス輸入停止を承認 ハンガリーは提訴

ビジネス

ホンダ、中国の四輪工場19日の週から再開 半導体不

ワールド

南アランド、22年以来の高値 一時1ドル=16ラン

ビジネス

欧州委、XのAI「Grok」を調査 性的画像生成巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中