育児で赤ちゃんにイライラしたときにこそ、やるべきこと
Magic Touch
正しい抱っこで赤ちゃんも親も快適に。触れ合いによって親の愛情ホルモンも増加する AZMANL/ISTOCK
<触れ合いは赤ちゃんの愛着を形成するだけではない。抱っこの驚くべき効果とは? 1日3時間抱っこした男性は......>
親子の愛情日本一を目指す──そう宣言をして、静岡県掛川市は桜美林大学リベラルアーツ学群の山口創教授と共同研究を実施した。
2017年度から3年計画で検証したのは、スキンシップの成果。その1つにこんな結果がある。
掛川市内で2つの保育園を選び、一方では家庭と園で3カ月間スキンシップなどの触れ合いを増やした。もう一方では、これまでどおりの活動をした。
3カ月後、前者の園の子供は「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが増加し、先生や親との愛着が強くなり、子供の社会性が伸び、積極的に子供同士で遊ぶようになった。
「これは相手との特別なつながりである愛着が安定しているからできること。3カ月でも家庭と保育園でスキンシップを増やすことで、子供たちが変わることが分かった」と山口は言う。
このときの生理学的メカニズムは、子供の脳でオキシトシンが分泌され、相手を信頼したり親密な関係を築いたりできるようになっていく。こうした触れ合いで保護者の脳でもオキシトシンが出るため、互いの絆が深まる。
「触れ合いの一番の作用は、こうした愛着の形成だと言える」と山口は言う。
では、まだ言語を持たない赤ちゃんは、スキンシップを受けることをどう感じているのだろう。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の篠原一之教授は、この部分を脳活動測定(近赤外分光法)で明らかにした。
優しく皮膚をなでる「アフェクティブタッチ」を大人の手に行うと、脳の報酬系が活性化する。報酬系とは、欲求が満たされたときや満たされると分かったときに活性化し、幸福感などを引き起こす脳内のシステムのことだ。
「赤ちゃんの手に触れると、大人と同じ脳の活動が見られたので、赤ちゃんも同じように心地よく感じていることが分かった」と篠原は語る。
おむつのメーカーとしても知られるユニ・チャームの共生社会研究所との共同研究からは「赤ちゃんはお尻、おなか、背中に優しく触れられることでも同じ反応を示すことが明らかになった」と言う。
また赤ちゃんへタッチケアを行うと、10人中10人の母親のストレスホルモンが減少することも分かっている。
「慣れない育児のなかで、イライラして子供をかわいく思えないときもあるだろう。そんなときはタッチケアのマニュアルを参考にわが子に数分だけ触れてみる。それだけで、イライラの解消になるはずだ」と篠原は言う。
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