最新記事

日本社会

ニッポンのリタイヤしたオジサンたちが次々と感染する「見えない病」の正体

2022年1月25日(火)12時25分
荒川和久(コラムニスト・独身研究家) *PRESIDENT Onlineからの転載
定年退職後、友達がいなくなった男性のイメージ

※写真はイメージです imtmphoto - REUTERS

退職した瞬間に、ぱったり交流が途絶える「友達」

よく高齢者向けに「ソロ社会」をテーマとした講演会を実施した際、特に男性の高齢者からこんな質問を多くいただきます。

「会社を辞めてから友達がいなくなった。どうすればいいか?」

この質問は、まず、前提の認識が違っていると思います。「友達がいなくなった」というのは、元は「友達がいた」という前提です。しかし、こうした質問をされる方は大抵「そもそも友達なんて元からいなかったのに、それに気づいていない」場合が多いのです。

彼らのいう友達とは、あくまで会社の同僚や上司・部下という「自分の周りにいた人」の事を指していて、決して友達ではありません。もちろん、会社の中で友達をもつ人もいるでしょう。頻繁に飲みに行ったり、休日にゴルフに行ったり、場合によっては、家族ぐるみで海水浴や旅行に行く間柄かもしれません。しかし、そのほとんどが会社を退職した瞬間に、ぱったり交流が途絶えてしまいます。

会社といういわゆるひとつの「囲いのあるコミュニティ」の中に互いに所属していたからこそ、たまたま行動を共にしただけであり、その囲いがなくなってしまえば、疎遠になるのも無理はありません。つまり、会社という「所属するコミュニティ」の中の人間関係の多くは、その所属がなくなると同時に消えてしまうものなのです。

上司だから、評価権があるから誰かがいたに過ぎない

残念ながら、退職された高齢男性の多くは、在職中にそのことに気付けません。それどころか、多くが仕事上の人間関係を友達と勘違いしています。特に、現役時代に一部上場の大企業に勤めて、家庭や趣味より仕事に邁進し、出世も果たし、そこそこの上席管理職を経験した人ほどその傾向があります。

会社ではポストに応じて、人間関係が自動的に用意されます。上司がいて、部下がいて、同僚がいて、あるプロジェクトの仕掛り中には一緒に目標に向かって協働する仲間がいたはずです。一定以上のポストであれば、秘書的な役割を果たす人材も用意されていました。自ら努力せずとも、自分の周りは人であふれていたでしょう。それが当たり前でした。ランチには誰かがお供についてくれて、「飲みに行くぞ」といえば、大勢の部下が(内心は行きたくないと思っていても)ついてきてくれて「俺って人気ある~! 慕われてる~!」などと思っていなかったでしょうか。

とんでもない勘違いです。上司だから、評価権があるから、人事権があるからついてきただけであって、決してあなたの人徳ではない。その証拠に、会社を辞めたとたん、誰も会社の人間から連絡など来ないでしょう。それは、かつてのあなたの上司にあなたもまったく連絡を取ろうとしなかったのと同じです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、イラン指導者殺害や体制転換の扇動「容認で

ワールド

OPECプラス8カ国、4月に増産開始で合意 イラン

ワールド

イラン首都照準に2日目攻撃、トランプ氏は反撃に警告

ワールド

プーチン氏、ハメネイ師殺害は道徳規範と国際法に違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 5
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 6
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 9
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 10
    最高指導者ハメネイ師死亡(イラン発表)、トランプ…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中