「世界でもっとも有名なセレブ女性から電話番号を聞きだす」 ハリウッドの伝説のナンパ師が使った禁断のワザ
非モテの若者だったジェフリーズは、認知心理学者・言語学者のジョン・グリンダーが心理学部の学生リチャード・バンドラーとともに開発したNLP(神経言語プログラミングNeuro-Linguistic Programming)に衝撃を受けた。グリンダーとバンドラーは、ミルトン・エリクソンの「アルファ催眠」を徹底的に研究し、マニュアル化したのだ。
エリクソンは20世紀のアメリカでもっとも大きな影響力をもった心理療法家で、その催眠技法はこう説明されている(※2)。
彼(エリクソン)は、伝統的な催眠技法とちがって、振り子などのそれらしい小道具も、奇妙な舞台装置も、いっさい用いません。だれもがしているごくふつうの日常会話を交わしているうちに、相手を、いともたやすくトランス状態に誘導してしまいます。
「私は絶対に催眠なんかにかからないぞ」と頑強に抵抗する人も、博士の手にかかると、なんなくトランスに入ってしまうのでした。
あいての「頑強に抵抗する力」を逆に誘導に利用してしまったのです。ちょうど、すぐれた柔道家が、相手の力を利用して技をかけるように。
バンドラーとグリンダーはエリクソンの催眠を記録した映像や講演をもとにそのテクニックを解明し、NLPとして体系化した。2人のセミナーには、「教育、指導、販売、プレゼンテーション、説得」などに催眠を利用したいひとたちが押し寄せた。
ジェフリーズもその一人で、目的はピックアップ(ナンパ)への応用だった。そして、「5年間にもわたってセックスレスの生活を送りながら」、何気ない日常会話を通じて女性の潜在意識にはたらきかけ、自在に操る「スピードナンパ術」を完成させたのだ。
悪魔のようなテクニック
NLPでは、わたしたちは無意識のうちに、世界を自分なりの「フレーム(額縁)」で見ていると考える。世界(社会)はあまりにも複雑で、脳のかぎられた認知能力ではすべての情報を処理できない。だとしたら、フレームの位置を動かすことで、ひとの認知や感情に影響を及ぼすことができるはずだ。
この考えは異端の説ではなく、現在では認知療法としてうつ病や不安障害の治療に使われ、心理療法(セラピー)の主流になっている。心理学者のキャロル・ドゥエックが提唱して有名になった「マインドセット」は、NLPの「フレーム」を言い換えたものだ。
脳は、フレームのなかのものは重要だと感じ、フレームの外側はどうでもいいものとして無視する。だとしたら、女性の関心を惹くためにはまず、自分を相手のフレームに入れなければならない。これがすべてのPUA(ピックアップ・アーティストPickup Artist=ナンパ師)の基本だ。
ジェフリーズはニールの目の前で、レストランのウェイトレスを相手にNLPを実演してみせた(※3)。
なにげない雑談から、「誰かに心の底から惹かれたとき、どうやって気づく?」という恋愛の話に展開し、ウェイトレスが「なんだかドキドキするような、妙な気持ちになるわ」と答えると、ジェフリーズは、手のひらを彼女の腹のあたりからゆっくり心臓の高さまで上げ、「君がもっと惹かれていくにしたがって、もっとドキドキしてくるはずだ」と囁いた。
そうやって2~3分、エレベーターのように手のひらを上下させ、催眠術をかけるように語りかけると、彼女の瞳は陶酔しているようになり、頬がどんどん赤らんできた。