最新記事

ルポ特別養子縁組

TBS久保田智子が選択した「特別養子縁組」という幸せのカタチ

ONE AND ONLY FAMILY : A STORY OF ADOPTION

2020年12月25日(金)09時30分
小暮聡子(本誌記者)

magSR201222_Adoption_data1.jpg

本誌2020年12月22日号20ページより

今年4月には民法が改正され、特別養子縁組の対象年齢がこれまでの6歳未満から15歳未満に引き上げられ、条件付きで17歳までの縁組も可能となった。根底には、子供はできる限り安定した親子関係の下、家庭で育てられるべきとの考えがある。

特別養子縁組の成立件数は、近年では05~12年まで年間300件強で推移していたが、13年以降は大幅に増加し、18年は624件、19年には711件となった。それでも、多くの子供が施設で暮らしている状況を考えれば、まだ少ない。

「私、養子を迎えようと思うの」。今から2年前の18年12月20日、久保田は数カ月ぶりに再会した筆者に突然そう言った。久保田は15年、日本テレビ政治部記者の平本と結婚し、翌年4月、ニューヨーク支局勤務となっていた平本と現地での生活を始めた。18年12月初めに夫婦で帰国すると、年明け早々に養子を迎えるつもりだと、仕事でもプライベートでも付き合いのあった筆者に告げたのだった。

その言葉どおり、久保田は19年1月28日、3380グラムの女児の母となった。ハナちゃんは現在、1歳10カ月。都内にある久保田と平本の自宅リビングの隣には、窓から光がたっぷり差し込む子供部屋がある。部屋の主であるハナちゃんは、最近は日を追うごとに言葉が増え、いつ会っても久保田に似て笑顔が絶えない。

久保田は20代の時、自分が不妊症であることを知った。「できないかもしれないと思ったところが、欲しいと思った始まりのような気がする」と、久保田は語った。「お医者さんは、子供は難しいでしょうという言い方だった」恋愛も結婚もこれからという、20代初めのことだった。

それでも、アナウンサーとしてTBSに入社した久保田は『筑紫哲也NEWS23』『報道特集』などの報道番組から『どうぶつ奇想天外!』などのバラエティーまで幅広く担当し、昼夜問わず働き続けた16年の間、いつか結婚して子供を育てたいという希望を捨てることはなかった。

高校の保健体育の授業で、子供を儲けることができない夫婦もいるけれど、養子縁組という可能性もあるという知識を得ていたからだ。「早い段階から養子という選択肢が自分の中にあったことは、私にとってはとても良かった」と、久保田は言う。

久保田は結婚を前提とした付き合いの中で、平本に子供を産むことは難しいと告げた。そのとき、「彼はとてもポジティブで切り替えが早かった」と言う。平本に当時の心境を聞くと、「僕は久保田智子と生きていくと決めていたから。子供ができないから智子と結婚しないという発想は、僕にはあり得なかった」。

自分の血のつながった子供を欲しいとは思わなかったのか。今年2月、私は平本に、久保田が泣きじゃくるハナちゃんをあやしに席を外した際に聞いた。すると平本は、こう言った。

「家族って何かを考えたときに、僕は一緒に暮らしていく仲間だと思っている。久保田智子も元は赤の他人で、血のつながりはないけれど籍を入れてパートナーになった。ハナちゃんも血のつながりはないけれど、籍を入れてファミリーになる。それでいいんじゃないかな」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米9月PPI、前年比2.7%上昇 エネルギー商品高

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る EV駆け込

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中